資 料

住友生命保険相互会社
2050年ネットゼロに向けた取組

(2024年3月作成、4月公表)

背景・目的

住友生命保険相互会社は、生命保険事業者であると同時に、将来にわたり顧客に保険金等を支払うために安心・確実を旨とする資産運用に取り組む機関投資家という立場でもある。この事業の公共性、規模、社会への影響の大きさを踏まえ、同社では、健康長寿社会の実現、社会・環境課題の解決への取組を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することを「サステナビリティ経営方針」に定めている。また、地球環境に対する具体的な活動方針として「スミセイ環境方針」を定めている。「スミセイ環境方針」では、その取組の1つとして、持続可能な社会の実現を目指し、生命保険事業者、および機関投資家としての取組を通じ脱炭素社会への移行を促すことで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献することをあげている。

 

同社は、温室効果ガス(GHG)排出量ネットゼロを目指すことを通じて、日本を含めた世界共通の気候変動という社会課題に対して、生命保険事業者並びに機関投資家として取組むことで、社会に「なくてはならない」生命保険会社の実現を目指している。

 

概要

同社では、2050年のGHG 排出量ネットゼロを目指し、また中間目標として2030年の削減目標を下記の通り定めている。

 

分類 2030年目標 2050年目標
Scope1+2+3(住友生命グループ※1) 2019年度比で50%削減 ネットゼロ
資産ポートフォリオ(住友生命単体) 2019年度比で50%削減
表1:住友生命のGHG排出量に関する目標

※1:住友生命および連結決算の対象としている子会社が対象
出典)21世紀金融行動原則「取組事例 住友生命保険相互会社 300-FY2022-04」、およびヒアリングにより作成。

 

なお、表中のScope1、2、3とはGHGプロトコルが定める、事業者のGHG排出量算定報告基準における概念であり、以下を指す。

  • Scope1:住友生命グループの燃料使用による直接排出量
  • Scope2:住友生命グループが購入した電気・熱の使用による間接排出量
  • Scope3:Scope1、2 以外の事業活動に伴う間接排出量。

 

Scope3は同社グループおよび同社グループ職員の積極的な取組により削減を目指す項目を対象としている。対象はカテゴリ1(購入した製品・サービス)、カテゴリ3(Scope1・2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動)、カテゴリ4(同社グループが費用負担する輸送、配送)、カテゴリ5(事業から出る廃棄物)、カテゴリ6(従業員の出張)、カテゴリ7(従業員の通勤)、カテゴリ12(販売した製品の廃棄)とする。今後必要な場合はその他のカテゴリの追加も検討予定。カテゴリ13(リース(下流))・カテゴリ15(投資)は、「資産ポートフォリオ」からの排出量として別途管理している。

 

同社では、上記目標達成のために、投資撤退(ダイベストメント)は最後の方策と位置付けた上で、以下の「2050年カーボンニュートラル実現に向けた取組み~気候変動対応ロードマップ~」を策定し、目標実現に向けた取組を実施している。

 

 

図:住友生命保険相互会社「2050年カーボンニュートラル実現に向けた取組み~気候変動対応ロードマップ~」
出典)住友生命保険相互会社ウェブサイト

 

実績

同社では、気候変動への対応等、持続可能な社会の実現に向けた全社的な取組内容や実績を「住友生命サステナビリティレポート」にて開示している。同レポートによれば、目標設定(2021年)から時間があまり経過していないが、目標の基準年である2019年度と2022年度の比較では、以下のように既に削減実績がみられる。

 

2019年度 2022年度
Scope 1+2+3 165,249 150,891
Scope 1 15,476 13,306
Scope 2 38,795 28,687
Scope 3 110,977 108,897
(単位:t-CO2e) 表2:住友生命保険相互会社グループのGHG排出削減実績(2019年度・2022年度比較)

出典)住友生命保険相互会社(2023)「住友生命 サステナビリティレポート 2023」、ヒアリングより作成。

 

上述の資産ポートフォリオの2050年GHG排出量ネットゼロ目標の進捗状況については、毎年公表する「責任投資活動報告書」にて開示している。「2023年版責任投資活動報告書」によれば、2021年度の実績は、2019年度比で32.7%減となっている。

 

取組を実施するにあたっての組織の方針や体制

同社では、サステナビリティ経営方針に基づく経営上の重要課題(サステナビリティ重要項目:マテリアリティ)に対応するため、経営計画においてその取組を定め、振返りを実施している。

 

経営計画は、社長の諮問機関である経営政策会議での審議を経て取締役会で決議を行っており、その振返りは経営政策会議および取締役会に報告を行う体制を整備している。マテリアリティの中でも、社会・環境課題に係る取組については、グループ・サステナビリティオフィサーを議長とする「社会・環境サステナビリティ推進協議会」を設置し、執行レベルで具体的に議論する場を設けている。同協議会では、カーボンニュートラルに向けた取組の推進も行っている。なお、同協議会は関係部門の部長で構成され、事務局は同社企画部が担っている。企画部では、全社のサステナビリティ運営の企画・推進を担うチーム(2023年末現在5名で構成)において全社的なカーボンニュートラルの推進を行う。

 

さらに、資産運用部門では、サステナブルファイナンスの推進に向け、2021年度から資産運用部門を統括する「運用企画部」傘下に「責任投資推進チーム(2023年末現在5名で構成)」を新設し、責任投資(サステナビリティを考慮した資産運用)にかかる運営全般の統括を行っている。

 

その他、責任投資取組のPDCAを回すべく、外部有識者が過半を占める「責任投資委員会」を定期的に開催し、取組のレベルアップに繋げている。

 

取組の今後の計画・広がりについて

同社では上記のように、2050年カーボンニュートラル実現という野心的な目標を掲げているが、その他、以下の関連事項についても取組む予定である。

  • 生命保険事業においては、特に当社事業に関係が深いと把握するリスク事象を特定し、2020年度より保険金等支払への影響分析(シナリオ分析)を行っている。今後分析対象範囲の拡大や定量的な分析も進める予定。
  • 資産運用においては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のガイダンスにもある、2℃もしくはそれを下回るシナリオ と資産ポートフォリオの整合性に関する分析(シナリオ分析)を試行しており、レベルアップに取組んでいく。
  • 地球環境保護・生物多様性保全への対応の情報開示の面においては、2023年9月に公表されたTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言を踏まえ、開示の充実について「社会・環境サステナビリティ推進協議会」での検討課題とし、対応を進める予定である。

 

課題と課題解決のヒント、工夫した点、苦労した点

Scope1+2+3のGHG削減に向けて、給付金請求の手続きのオンライン化等を通じた紙使用量の削減、リモートワーク・在宅勤務の活用、遠隔地とのオンライン会議による出張抑制、オフィスビルへの省エネ設備の導入・再生可能エネルギー由来電力の導入等に取組んできた。さらなるGHG削減に向けて、このような取組をグループ各社にも広げ、職員の環境意識を高めながらグループ全体で削減取組を推進している。

 

資産ポートフォリオのGHG排出量を削減するためには、投融資先の脱炭素化を進める必要があり、機関投資家としては、対話とファイナンスを通じて後押ししていくことが重要となる。そのため、トランジション・ファイナンスを含む、気候変動対応ファイナンスについて、現中期経営計画期間(2023~2025年度)で累計4,000億円の実行目標を掲げ、取組んでいる。

 

参考にしたWEBサイト等