活動内容

株式会社横浜銀行
「SDGS事業性評価」の取組~地域企業のサステナビリティ経営支援~

(2024年3月作成、4月公表)

背景・目的

脱炭素への取組は、顧客企業の経営課題として捉える必要がある。理由の一つとして、取組まない場合にサプライチェーンから除外されるリスクを内包していることが挙げられる。横浜銀行は事業性評価にSDGsや脱炭素に関する項目を組込むことにより、2016年より実施を開始した取組を進化させ、顧客企業に対してサステナビリティの理解度を高め、脱炭素経営へのアクションにつなげている。

 

概要

事業性評価は、顧客企業における経営課題の解決に向けたエンゲージメントの一つである。2016年より開始した当初の事業性評価は顧客企業の内部環境や外部環境におけるSWOT分析が中心であったが、2022年4月、従来のツールにSDGs要素を加え、約50項目からなる「SDGs事業性評価」に作り替えた。また、昨今の脱炭素経営への重要性を鑑みて、2022年12月に「脱炭素事業性評価」をさらに開発し、より脱炭素領域に絞って顧客企業への課題解決につなげ、GHG排出量の可視化など、脱炭素に係る経営課題を整理・共有している。

 

開発にあたってはいずれのプロダクトも、グループ会社の浜銀総合研究所とともに営業戦略部が取組んだ。

 

時期 横浜銀行の事業性評価に関するトピック
2016.4 事業性評価の取組開始
2022.4 SDGs事業性評価の取組開始
2022.12 脱炭素事業性評価の取組開始
表1:横浜銀行の事業性評価に関するトピック

出典)横浜銀行ウェブサイト(2022.12.9)ニュースリリースをもとに作成。

 

  ①SDGs事業性評価の概要 ②脱炭素事業性評価の概要
設問項目数約50項目約40項目
特徴既存の事業性評価の項目に加えて、環境、社会、ガバナンスなど幅広い項目に関して、会社の経営課題として捉えているか確認する内容。脱炭素に特化した設問にWEB上で回答する方式。 脱炭素領域の認知度から、取組状況を確認して将来発生する可能性のある脅威に対して示唆する内容。 両者共通の 特徴・シートや設問は当社のオリジナル。浜銀総合研究所とともに作成。 ・事業性評価の目的は、今後解決が必要な課題を抽出すること。 ・主に取組実施の有無を問うもの。 プロセス各営業店の行員が評価項目への回答を、対面を前提に得る →営業店内で回答内容の分析 →支店長クラスが顧客企業の社長に対して、課題解決に向けた提案を行う本部から顧客企業に、脱炭素に関するWEB上の設問回答を依頼し、回答を得る →担当の営業店が回答内容を分析 →役職者クラス以上が顧客企業の社長に対して、課題解決に向けた提案を行う
表2:事業性評価の概要

出典)横浜銀行ウェブサイト(2022.12.9)ニュースリリースおよびヒアリングをもとに作成。

 

実績

2016年4月からの事業性評価全体の評価先件数は4,161件(2022年度末時点)である。

 

なお、策定する課題の内容や、その課題解決の進捗を評価するにあたり、課題を「事業戦略における課題」等、いくつかの戦略によって分類整理しているが、それらのうち、「サステナビリティ戦略における課題」の構成比が、SDGs事業性評価(脱炭素含む)の取組により飛躍的に高まっており、行員の行動変容が確認された。

 

事業性評価の活用については以下のとおり。事業性評価の実施により、顧客企業各社の課題抽出を営業店が行う。課題の内容は、サステナビリティ戦略に関わる内容から、資本戦略、財務戦略に関わる課題まで多岐にわたる。評価を実施した翌期以降に、営業店と本部が連携して企業価値を高める活動につなげている。

 

取組を実施するにあたっての組織の方針や体制

営業戦略部のサステナビリティ戦略企画・法人取引推進支援グループ(人員11名。このうち、事業性評価専担者1名)が、事業性評価シートの開発および管理を行い、その他人員で全国営業店の支援も行っている。

 

取組の今後の計画・広がりについて

SDGsの諸課題のなかで、生物多様性など他領域についても、今後検討が必要な課題と認識しているが、現在は脱炭素に注力している。実際に中小企業の経営者は、TCFD開示を行っている大企業とは違い、目の前の事業や資金繰り対応に追われており、SDGsに含まれる多様な課題へ取組を能動的かつ経営課題として捉えている企業は少ないため、金融機関の丁寧かつ継続的なエンゲージメントが求められている。

 

課題と課題解決のヒント、工夫した点、苦労した点

〇脱炭素事業性評価の作成にあたって工夫した点

これまでの事業性評価は、顧客企業との対面を前提として取組状況を把握してきたが、顧客企業に依頼する脱炭素領域の取組状況については、初期段階のやりとりをWEBとメール対応に切り替え、営業店活動における効率化に努めている。

 

〇脱炭素事業性評価を実施する場面での課題

中小企業のサステナビリティ領域への関心は然程高くない。SDGsの考え方については近年、ようやく浸透しつつあるが、脱炭素をはじめとする環境課題に実際に取組むことは、コストがかかることと一般的に考えられている。横浜銀行としては、環境課題への取組は、顧客企業の企業価値の向上や将来の利益を高めるために不可欠である旨を伝える努力を引き続き行っていく。

 

参考にしたWEBサイト等