資 料

大和アセットマネジメント株式会社
「クリーンテック株式&グリーンボンド・ファンド(愛称:みらいEARTH)」の設定

(2024年3月作成、4月公表)

背景・目的

「クリーンテック株式&グリーンボンド・ファンド(愛称:みらいEARTH)」は、日本を含む世界のクリーンテック関連企業の株式およびグリーンボンドに投資し、信託財産の成長を目指したファンドである。大和アセットマネジメント株式会社が2020年9月に販売を開始した。

 

概要

同ファンドは、2本の投資信託証券に投資する「ファンド・オブ・ファンズ」である。運用は、アクサ・インベストメント・マネージャーズ(以下、アクサIM)が担当。また、純資産総額に対して、以下のファンドの組入比率をそれぞれ50%程度とすることを目指している。

 

アクサIMクリーンテック関連株式ファンド(為替ヘッジなし)(適格機関投資家専用):

「地球温暖化対策」、「環境汚染防止」、「廃棄物処理・資源有効利用」、「持続可能な食糧供給」等のテーマに着目し、これらの分野で優れた技術を有し、その技術を事業化している企業に投資するファンド。ポートフォリオ構築においては、世界の上場株式すべての銘柄について、アクサIMのセクター・ポリシーとESG(環境・社会・ガバナンス)基準に基づき、除外銘柄や基準に満たない銘柄を外して責任投資ユニバースを構築。その後、同ユニバースの中から、より詳細なファンダメンタルズ分析等を実施し、絞込みを行うが、その際にESGの詳細な評価、事業内容のインパクト属性分析を実施する。ESG評価については、ESGリスクの特定に加え、以下の「アクサIMのインパクト投資における5つの柱」に沿ったインパクトの波及力分析を踏まえ、銘柄の絞り込みを行う。

 

アクサIMのインパクト投資における5つの柱
  • 意図性:投資は、社会的又は環境にプラスの成果を直接目的とするものに行う。また、プラスのインパクトに意図をもって戦略的にコミットを行っている企業に投資を行う。
  • 実質性:受益者や企業にプラスの成果を顕著にもたらす企業に投資する。
  • 追加性:企業が、例えば革新的な新しい解決策や低価格など、従来よりも利用可能で商業的にも有望な「求められている」 製品やサービスを提供している。
  • 外部不経済性:企業の活動内容や製品、サービスが、他に生み出しているプラスのインパクトを著しく妨げていることがないかについて留意する。
  • 可測性:投資が及ぼす社会及び環境へのパフォーマンスを測定し、報告するための明確な方法やコミットメントを示している。

出典)大和アセットマネジメント株式会社へのヒアリング(2024年1月にIGESがメールにより実施)を基に作成。詳しくは、アクサ・インベストメント・マネージャーズ『上場資産投資によるインパクトの創出』 を参照。

 

アクサIMグリーンボンド・ファンド(為替ヘッジなし)(適格機関投資家専用):

環境にやさしいプロジェクト向けの資金調達を目的として発行されたグリーンボンド(公社債)に投資を行うファンド。クレジット分析などの一般的な債券分析の手法に加え、ESGの観点からも銘柄を選定することで優良なグリーンボンドへの投資を行い、安定したリターンを獲得することを目指していく方針を掲げる。ポートフォリオ構築においては、通常の債券投資における信用性評価に加えて、責任投資の観点を統合。具体的にはセクター別政策やESG基準に沿わない発行体の除外等の他、グリーンボンド・フレームワーク分析により、最も透明性が高く、インパクトの大きいグリーンボンドを特定。グリーンボンド・フレームワーク分析は以下の4つの柱(発行体の環境戦略、プロジェクトの種類、調達資金の管理、環境へのインパクト – 継続的な監視と報告)から構成される。

 

アクサIMのグリーンボンド・フレームワーク分析の4つの柱

1. 発行体の環境戦略:発行体の戦略全般とグリーンボンド・プロジェクトとの整合性、環境に関する実績と目標、発行体との一対一の会合、経営陣とのミーティング、訴訟関連事項等。

2. グリーンボンドで資金調達するプロジェクトの “グリーン度合” の定義:以下の作業を実施。

  • 主にグリーンボンド原則(GBP)とクライメット・ボンド・イニシアティブ (CBI)のカテゴリーに基づくプロジェクトの内訳の特定。
  • プロジェクトの、環境目標(気候変動の緩和等)への貢献の特定。
  • 特定のプロジェクトの除外(例:化石燃料の探鉱、生産及び開発、すべての原子力関連事業、大規模水力発電(>20MW)建設事業) 。

3. 調達資金の管理:調達資金が、対象となるプロジェクトの資金を確保できるように、アナリストは様々な下記の内容の調査を実施(例:外部からの検証があるか (社外監査役の有無))

4. 環境へのインパクト – 継続的な監視とレポーティング:グリーンプロジェクトによる環境インパクトについて、少なくとも年に一度はレポーティングが可能で、それを約束できる発行体を求めている。アクサIM社の投資によるインパクトを測定するため、個別プロジェクト単位または合算ベースで特定のKPIを求めている。

出典)大和アセットマネジメント株式会社へのヒアリング(2024年1月にIGESがメールにより実施)を基に作成。詳しくは、アクサ・インベストメント・マネージャーズ『当社のグリーンボンドフレームワーク』 を参照。

 

上記ファンドへの投資を通じて、持続可能な社会の構築に向けて、環境や社会のインパクト創出することを目指す。投資を行ったクリーンテック関連企業の株式およびグリーンボンドの社会的なインパクトは、二酸化炭素の削減量、水の使用量等で測定する。

 

実績

直近(2022年11月12日~2023年5月11日)での実績は以下の通り。

  • アクサIMクリーンテック関連株式ファンド:2023年7月末時点で53銘柄に投資。
  • アクサIMグリーンボンド・ファンド: 2023年7月末時点で185銘柄のグリーンボンドに投資。資金使途では、再生可能エネルギーのプロジェクトが主な融資先。

 

また、2023年8月に上記2ファンドについてそれぞれインパクトレポートを開示している。アクサIMクリーンテック関連株式ファンドのインパクトレポートでは、本ファンドの2023年3月31日時点のインパクトを算出している(表1)。アクサIMグリーンボンド・ファンドのインパクトレポートでは、本ファンドの2023年3月31日時点のインパクトを算出している(表2)。

 

また、アクサIMクリーンテック関連株式ファンド、及び、アクサIMグリーンボンド・ファンド共に、上記の他、温度スコア(現在のポートフォリオにおいて企業が行うと予想される事業活動によって、2100年までに世界の平均気温がどの程度上昇するかを表した指標)、売上における適格グリーン割合(EUタクソノミーで適格と判断される環境に配慮した商品・サービスから得られる収益の割合)、売上におけるブラウン割合(化石燃料の発電から得られる収益の割合)等も示している。

 

表1:アクサIMクリーンテック関連株式ファンドのインパクト情報

出典)アクサIMクリーンテック関連株式ファンド インパクトレポートP.4

 

表1において、売上による炭素強度が参考指数よりも高くなっているが、これは本ファンドの戦略と市場全体(参考指数)のセクター配分比率の違いが大きな要因である。同戦略は、環境関連のテクノロジーやサービスを提供する企業に投資するが、投資目的に沿った銘柄選択・ポートフォリオ構築を行うことにより、セクター構成は市場全体とは大きく異なる傾向がある。特に、比較的排出量の大きい資本財の組入れが多く、比較的排出量の少ない金融セクターの組入れがない(2023年11月末現在)。このようなセクター配分比率の違いはあるものの、2023年3月31日時点の「カーボンフットプリント」のスコープ1+2の数値は、参考指数よりも若干少なくなっている1)

1)この背景として、以下の炭素強度とカーボンフットプリントの計算方法の違いがある。 炭素強度:各企業のCO2単位排出量に基づき、ポートフォリオが保有する企業全体のCO2排出量を売上で除して、その企業活動の結果としての売上百万ドル当たりのCO2排出量として算出。 カーボンフットプリント:各企業のCO2総排出量を合計してポートフォリオの総排出量として、それをポートフォリオの時価総額で除して、ポートフォリオ百万ドル当たりのCO2排出量として算出。

 

表2:アクサIMグリーンボンド・ファンドのインパクト情報

出典)アクサIMクリーンテック関連株式ファンド インパクトレポートP.4

 

取組を実施するにあたっての組織の方針や体制

大和アセットマネジメント株式会社では、同ファンドをESGファンド(インパクトファンド)と定義し、金融庁の監督指針に沿う形でインパクトレポートや運用報告書上で定期的な情報開示を行う上で、社内で体制整備、開示方針の策定を進めた。具体的には、インパクトファンドの定義づけや定期開示が必要な項目(CO2排出削減量など)の特定、開示頻度の検討などが含まれる。また、同ファンドに関する運用チームは11名で構成されている(うち、主担当は1名)。

 

取組の今後の計画・広がりについて

投資判断に際し企業価値の正しい評価を行うには、財務情報とESGに代表される非財務情報を統合して判断することが必須であるとの考えの下、大和アセットマネジメント株式会社では、大部分のアクティブファンドにおいて、ESGインテグレーションを実施。同社ではESGの考慮を主な特色とするファンドについては、今後の相場展開や外部環境によって増減が考えられるものの、財務、非財務(ESG)の統合の流れは今後も変わらず、特に「E」は通常の投資判断に組込まれてくるだろうと考えている。さらに脱炭素関連では、Net Zero Asset Managers Initiative(ネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアティブ)に加盟しており、2023年2月時点での初期目標として、以下の目標を掲げている。

 

コミットメント・ステートメントでカバーされている資産の割合 運用資産残高(1,030億米ドル)の67%
ネットゼロに沿った資産運用の割合をカバーする中間目標 ベースラインは93 tCO2/百万ドル収益で、目標は原単位ベースでポートフォリオ排出量の50%削減。
表3:大和アセットマネジメント株式会社による脱炭素目標

出典)Net Zero Asset Managers Initiative “Daiwa Asset Management Co.Ltd.”

 

課題と課題解決のヒント、工夫した点、苦労した点

環境関連株式投資によって得られる成長性とグリーンボンド投信によって得られる安定性を組合わせ、長期的に優れたリターンの獲得を目指すに当たり、株と債券の投資比率が課題であった。大和アセットマネジメント株式会社では、テーマ型のインパクト投資戦略として、クリーンテック株式のみならずグリーンボンドを約50%組入れることで優れた経済的社会的リターンの提供が可能であると考えている。

 

参考にしたWEBサイト等