活動内容

株式会社りそな銀行
「りそなSXフレームワークローン」の取扱い

(2024年3月作成、4月公表)

背景・目的

貸出金の約8割が個人・中堅中小企業(リテール)向けであるりそなグループは、2021年に設定したサステナビリティ長期目標の一つとして、「『リテール・トランジション・ファイナンス目標』2021年度~2030年度までの累計取扱高10兆円」を掲げた。リテール・トランジション・ファイナンスとは、社会全体のサステナビリティ・トランスフォーメーション(以下、SX1))の潮流が中堅中小企業の顧客に及ぼすリスクと機会について対話を深め、借入人の意識・行動の移行を支援するためのファイナンスを指しており、りそなSXフレームワークローンは、その主力の一つとなっている。

1)SXについて、りそなグループでは「持続可能な社会に向けた世の中の変化を先取りし、企業のビジネスモデルや個人のライフスタイルを自ら変化させていくこと」と整理。(りそなホールディングスウェブサイトより)

 

りそなグループは、借入人の意識・行動の移行に向け、目標公表以降、グループ全体で借入人との対話に取組んできた。その対話で得られた成果をもとに、次のステップとして2023年度は、借入人の現状を体系的・俯瞰的に把握し、りそなSXフレームワークローンをはじめとするSX関連商品の提供に注力している。

 

概要

りそな銀行が独自に開発した「りそなSXフレームワークローン」の取扱開始は2021年10月である。この商品はSLLではないが、Loan Market Association等が策定した「サステナビリティ・リンク・ローン原則」(以下、原則)および環境省の「サステナビリティ・リンク・ローンガイドライン」(以下、ガイドライン)の枠組みに整合しており、かつ、りそな銀行のメインの顧客層となっている中堅中小企業にとって利用しやすい設計のパッケージ型商品にして、そのSXを促すことを目的としている。

 

りそなSXフレームワークローンの最大の特徴は、「サステナビリティ・リンク・ローン原則」および環境省の「サステナビリティ・リンク・ローンガイドライン」の枠組との整合性について、個別での第三者機関の認証を不要とした点にある。SLLの場合には企業にとって借入のたびに第三者機関による認証取得が必要となるが、りそなSXフレームワークローンの場合は不要であるため、借入人は、認証取得のための手間とコストを省くことができる。なお、設定されたKPIおよびSPTsが妥当なものであるかどうかはりそな銀行が評価し、目標の取組状況についてはりそな総合研究所と連携して年に一度レビューを実施する。りそなSXフレームワークローン全体の枠組につき、商品開発時及び年に一度格付投資情報センター(R&I)からオピニオンを取得しており、それにより品質を担保している。詳細については表1参照。

 

りそなSXフレームワークローンの開発は、SLLよりも手軽に環境・社会配慮をすすめられる商品として、環境・社会問題に対する意識がさほど高くない企業のみならず、逆に環境・社会問題に関心がありながらコスト・時間・人的リソースの面で取組が後手に回りがちな企業の存在も視野に入れて行われた。

 

  SLL りそなSXフレームワークローン
特徴選定されたSPTs が達成されるか否かが、財務的な結果にリンクしていること。例えば、あらかじめ合意されたSPTsがKPIsによる評価によって達成された場合に貸付金利が下げられ、またその逆も同様である。SPTs目標の設定等、基本的な融資の特性はSLLに整合しながらも、個別の第三者検証を簡略化した中堅中小企業向けのパッケージ型商品(商品スキーム全体に対して第三者評価を取得)。融資の継続を前提に、同商品を次回組成する際の融資手数料を半額免除。
ねらいサステナビリティ経営の高度化を促す 等サステナビリティ経営の高度化(特に中堅中小企業のSX)を促す
主な 契約企業大企業中堅中小企業
融資金額定め無し1億円以上
融資期間定め無し3年以上
期待されるKPIの選定、SPTsの設定事項・KPI:借入人のビジネス全体にとって中核的かつ重要であり、事業運営にとって高い戦略的意義を有すること ・SPTs:野心的であること 等・KPI・SPTsともに原則(※)および環境省ガイドラインに整合していること(りそな銀行で示す所定のSPTsを選択もしくは個別設定) ・SPTsの水準(野心度)は個社の現在地を勘案して個別設定
KPI・SPTsのレビューKPIとSPTsの適切性について、借入人は第三者のレビューを求めることが望ましい。第三者のレビューを取得しない場合、借入人は、内部の専門的知識を示すか開発することが強く推奨される。・第三者機関のレビューは不要 (営業店の担当者が借入人との対話の上でKPI・SPTsの設定案を作成し、本部所管部が設定理由や事業特性を勘案して適切性を判断)
レポーティング・外部機関によるESG格付等のSPTs達成状況に関する最新情報を入手できるよう、貸手に少なくとも年に1回以上報告すべき ・SPTsに関する情報を一般に開示するか貸手に報告・年に1回SPTs達成状況を営業店がエビデンス取得し確認後、本部所管部に報告・報告事項の一般開示は要件としていない
検証・独立した外部機関による検証を少なくとも年1回以上受けなければならない ・借入人が外部機関による検証を受けた場合には、適切な場合には検証結果を一般に開示することが望ましい・りそな総合研究所が第三者として年に1回レビュー(数値検証)し「SPTs達成状況確認書」を作成 ・レビュー結果は非開示
表1:SLL、りそなSXフレームワークローンの概要

※原則:Loan Market Association等が策定した「サステナビリティ・リンク・ローン原則」 出典)環境省『グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン 2022年版』、グリーンファイナンスポータル運営事務局ウェブサイト「サステナビリティ・リンク・ローン原則」、21世紀金融行動原則ウェブサイト「りそなホールディングス 取組事例」、りそなホールディングスウェブサイト ニュースルーム、ヒアリングより作成。

 

実績

りそな銀行におけるSLLとりそなSXフレームワークローンの取扱状況は、契約金額でみると大企業が主な対象のSLLの方が大きいものの、件数でみた比率では、りそなSXフレームワークローンの方が圧倒的に多くなっている(表2参照)。

 

KPI設定分野はいずれも環境分野が多くなっており、借入人の関心の高さが窺える。 りそなSXフレームワークローンの取扱開始から2年が経過し、契約している借入人のなかには継続してローンを活用する意向を示すケースもみられる。

 

  SLL りそなSXフレームワークローン
利用企業数の比率 (2021/10~2023/10)1 : 7
業種多岐にわたる
主なKPI設定分野環境及び社会分野(環境分野を設定するケースが多い傾向)
その他特徴シンジケート及び相対取引基本的に相対取引
表2:りそな銀行によるSLLおよびりそなSXフレームワークローンの取扱状況

出典)ヒアリングより作成。

 

取組を実施するにあたっての組織の方針や体制

リテール・トランジション・ファイナンス推進の中核を担うのは、法人営業部門の統括や個別商品の組成・所管運用を行うコーポレートビジネス部。同部において同行独自の商品であるりそなSXフレームワークローンも企画されたもので、現在ではKPI、SPTsの適切性判断の知見が担当行員に蓄積されつつある。

 

一方、SLLについては大企業による利用が多く、大企業向け営業支援を行うソリューションビジネス部が営業店担当者をサポートするケースが多い。

 

取組の今後の計画・広がりについて

引き続き幅広く中堅中小企業の顧客のSXを推進。とりわけサプライチェーンを通じた要請が強くなりつつある製造業等、特に早期対応が求められる業界を注視して対話を行い、取引先企業の機会を伸ばしリスクの低減に取組む。

 

課題と課題解決のヒント、工夫した点、苦労した点

リテール・トランジション・ファイナンスの更なる推進に向けては、顧客と接する営業担当者の意識醸成・知識向上が不可欠と認識。りそなグループではサステナビリティに関する研修(階層別研修や全従業員向けeラーニング、りそなSXフレームワークローン取扱い担当者向けeラーニング)実施の他、情報発信等を幅広く行っている。コーポレートビジネス部およびソリューションビジネス部は、流れの速いSDGsやサステナビリティに関する最新情報を日々収集し、法人渉外向けのイントラネット等を通じた発信や、取引先に提供するディスカッションペーパーを作成。営業店担当者が取引先と対話をする際に活用されている。これらの取組を継続していくことで、案件組成の時間が短縮化する等、業務の効率化も進みつつある。

 

また、意識醸成だけでなく、取引先企業が実際に取組の第一歩を踏み出しやすいサポートも必要と認識。たとえば温暖化防止の分野では、CO2排出量簡易算出サービスの無償提供を2022年に開始した。この他にも、取引先企業のSDGs・サステナビリティ取組度合いに応じた商品・サービスを手掛けている。

 

参考にしたWEBサイト等