21世紀金融行動原則とは

持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則(7つの原則)

はじめに

(2011年10月策定)

 

2011年3月11日東日本を襲った史上最大級の地震と津波は、自然災害を前に人間がいかに無力であるかを暴きだした。日常生活を支えてきた科学技術が、一転して人間社会に深刻な影響を与えたことも大きな衝撃だった。“3.11”が明らかにした文明社会の基盤の脆弱さを目の当たりにして、我々は皆持続可能性とは何か再考を迫られた。

 

翻って地球規模で考えると、気候変動や生物多様性の損失などが今後想像もできないほどの被害を引き起こす懸念がある。また、途上国を中心に貧困や感染症のリスクなども拡がっており、人間の安全保障に対する脅威は深刻化している。我々は震災からの復興とともに、地球規模の課題にも果敢に取り組んでいかねばならない。

 

日本と世界が直面する課題を重ね合わせるとき、それらに立ち向かうチャレンジは次なる飛躍へのターニングポイントとなる。震災からの復興活動を通じてエネルギーの持続可能な利用や生態系と調和した地域を再興できれば、21 世紀型の社会システムとして世界に発信できるモデルになり得よう。ここに金融が社会から必要とされ信頼される存在であり続けるためのカギがある。我々は、持続可能な社会の形成を推進する取組みに21世紀の金融の新しい役割を見出すことができる。

 

前 文

(2022年6月22日改定)

 

持続可能な社会を、将来世代のニーズを満たしつつ、現在世代のニーズも満足させる社会とすれば、現在世代は、自らはもとより将来世代のためにも人と地球を取り巻く様々な問題の解決に、予防的アプローチの視点も踏まえて真摯に取り組み、自然と共生する安全で安心できる生活を目指していかねばならない。

 

地球規模の課題解決において金融業界が連携を始めたのは1992年の国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)の設立に遡る。爾来、その活動は環境問題(Environment)から社会問題(Social)、企業統治問題(Governance)へと広がり、2006年には責任投資原則(PRI)の制定を主導した。国内では、2015年に世界最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名したことを契機として、短期的な利益の追求ではなく長期的な企業成長を重視した投資活動、すなわちESG投資が急速に進展し、メインストリームに拡大した。

 

企業は、本業を通じて社会課題を解決しながら、持続可能な成長を続けるビジネスモデルの追求を迫られており、2015年のSDGs(持続可能な開発目標)の合意に見られるように、気候変動問題や、生物多様性、サーキュラーエコノミー(循環経済)、人権問題などの課題に対し、世界全体での行動変容が待ったなしの状況にある。特に気候変動問題については、第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において採択された、「気温上昇を産業革命以前より1.5℃に抑える努力を追求すること」としたパリ協定を世界共通の長期目標として、国際的な脱炭素への取組みが進展し、日本でも、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」がなされ、企業はより一層取組みを加速させることが求められている。2021年に開催されたCOP26においても、1.5℃目標の達成に向けた努力を続けることが合意され、パリ協定の実現に向けた強い意志が示された。

 

私たち日本の金融機関は、中長期的な視点に立って地域固有の課題と向き合い、多様なステークホルダーと連携しながら、地域の価値向上ひいては国内産業の競争力強化や新しい産業の創出をサポートすることに加え、グローバル社会の一員として、科学的知見に基づき、地球規模で持続可能な社会への着実で公正なトランジションに貢献しなければならない。

 

そのためには、不確実な将来を展望し、持続可能な成長と社会課題解決の同期化を追求する企業と、私たち金融機関が建設的な対話(エンゲージメント)を促進させ、ポジティブインパクトの創出とネガティブインパクトの緩和を目指し、企業の持続的成長を支援することが必要であり、世界有数の経済大国における金融機関としての責任は極めて大きい。

 

本原則は、地球の未来を憂い、持続可能な社会の形成のために必要な責任と役割を果たしたいと考える私たち金融機関の行動指針として2011年に策定された初版原則の意志を受け継ぎ、10年間の外部環境変化を踏まえるとともに、さらにその先を見据え、2022年に新たな原則として見直したものである。また本原則は、2011年の策定時より変わらず、業態、規模、地域などに制約されることなく、志を同じくする金融機関が協働する出発点となることを企図している。私たち署名金融機関は、自らの業務内容を踏まえ、以下の「原則」に基づく取組みを積極的に実践し、社会の変革を主導していく。

 

原 則

(2022年6月22日改定)

【原則1】基本姿勢

持続可能な社会の形成のために、私たち金融機関自らが果たす責任と役割を認識の上、環境・社会・経済へのポジティブインパクトの創出や、ネガティブインパクトの緩和を目指し、それぞれの事業を通じて最善の取組みを率先して実践する。

 

【原則2】持続可能なグローバル社会への貢献

社会の着実で公正なトランジションに向けて、イノベーションを通じた産業や事業の創出・発展に資する金融商品やサービスを開発・提供し、持続可能なグローバル社会の形成をリードする。

 

【原則3】持続可能な地域社会形成への貢献

地域特性を踏まえた環境・社会・経済における課題解決をサポートし、地域の包摂性とレジリエンスの向上を通じて、持続可能な地域社会の形成をリードする。

 

【原則4】人材育成

金融機関における人的資本の重要性を認識し、環境や社会の問題に対して自ら考え、行動を起こすことのできる人材の育成を行う。

 

【原則5】多様なステークホルダーとの連携

持続可能な社会の形成には、私たち金融機関をはじめ、多様なステークホルダーが連携することが重要と認識し、かかる取組みに参画するだけでなく主体的な役割を担う。

 

【原則6】持続可能なサプライチェーン構築

気候変動・生物多様性等の環境問題や人権をはじめとする社会課題に積極的に取り組むとともに、投融資先を含む取引先等との建設的なエンゲージメントを通じて、持続可能なサプライチェーンの構築を図る。

 

【原則7】情報開示

社会の持続可能性を高める活動が経営的な課題であると認識し、国内外の動向と開示フレームワークを踏まえ、取組みを広くステークホルダーに情報開示するとともに不断の改善を行う。

 

7つの原則及び前文の改定について(2022年)