活動内容

三井住友ファイナンス&リース株式会社
「サステナビリティ・リンク・リース」の取扱

(2024年3月作成、4月公表)

背景・目的

三井住友ファイナンス&リース(以下、SMFL)は、サステナブル関連ビジネスに注力しており、2020年度からの累計契約額を2025年度までに1兆円、2029年度までに2兆円とする中期目標を設定している。その累計契約額は、2022年度までの3年間で3,297億円に達した。主な対象取引には、再エネ事業における出資やファイナンス、企業や官公庁との協働によるSDGsリース、SDGsレンタル、環境認証不動産の開発案件、サステナビリティ・リンク・リースがある。

 

これらのうちサステナビリティ・リンク・リースは、全社の営業活動支援を所管する営業推進部が、サステナビリティへの取組による企業価値向上・持続可能な社会の実現を目指す顧客企業を幅広く支援すべく、新たな商品として開発した。日本政府が気候変動対策として、2030年度に温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すことを表明後、産業界は削減目標を設定して動き出したことも後押しし、同スキームへの注目が寄せられている。

 

また、SMFLはリース会社として初めてポセイドン原則へ参画し、海運会社向けに脱炭素化へのインセンティブを提供する取組としてサステナビリティ・リンク・リース/ローンも同様に展開している。

 

概要

サステナビリティ・リンク・リースは、顧客企業のESG戦略と整合したSPTs(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット)を設定し、リース条件とSPTsに対する顧客企業のパフォーマンスを連携させ、SPTsを達成することで、環境面・社会面において持続可能な経済活動および経済成長を支援・促進することを目指す商品である。したがって、商品の内容自体はサステナビリティ・リンク・ローンと同じであり、準拠している原則・ガイドラインは、LMA(Loan Market Association)等が策定したサステナビリティ・リンク・ローン原則と環境省のサステナビリティ・リンク・ローンガイドラインである。

 

第三者評価に関しては、日本総合研究所が第三者評価機関として、上記のサステナビリティ・リンク・ローン原則に基づいたSPTsの設定および期初・期中の評価を行い、SPTs達成時にはリース条件が優遇されることになる。

 

この商品をきっかけに、顧客企業のサステナブル経営を目指すパートナーとして、対話し議論することで、省エネや再エネ物件を導入するきっかけを生み出すことにも寄与している。また、リース業界でのサステナビリティ・リンク・リースの取組は先例がないため、同社の企業価値向上にもつながると考えている。

 

実績

サステナビリティ・リンク・リース成約の第一号は、2022年7月に契約を締結した、電気機器メーカーの案件である。尚、同メーカーは環境問題への意識が高く、RE100に加盟して脱炭素化に取組んでおり、当初設定していた温室効果ガス排出削減目標をさらに引上げる決定をしている。

 

取組を実施するにあたっての組織の方針や体制

営業推進部(人員19名)がサステナビリティ・リンク・リース商品を開発した。

 

同部は、商品の所管部署であり、全国のリース営業部店(総数500名以上)の営業支援を行っている。

 

本スキームにおいては、開発者が中心となって所属部内でスキームの理解浸透を行い、商品に関連する知識を部内で共有したのちに、同部の人員が講師となって、全国の営業担当者を対象に勉強会を開催してきた。

 

サステナビリティ・リンク・リースの仕組自体は難しいものではない。しかし、サステナビリティに関する目標を立ててもらうよう顧客企業を支援するには、サステナビリティに関する日本の政策や世界の潮流等に関し、営業店の担当者が十分な知識を持ち、顧客企業に説明できなければならない。SMFLの社員はリース業ゆえ環境に関する意識はもともと高いと思われるが、それでも、サステナビリティの動きが速いため、知識の習得が追い付かない場合もある。その際は、営業支援を行う同部が営業担当者乃至は顧客企業へ的確な提言が出来るよう体制を構築している。

 

取組の今後の計画・広がりについて

大手銀行を中心に取扱われているサステナビリティ・リンク・ローン商品において、設定されるSPTsは日本政府が設定する目標値に沿った、水準の高いものが多く、そのためこの商品の対象となるのはおのずと大企業が多くなる。SMFLは、サステナビリティの取組に十分なリソースを割くことができない中小企業もサステナビリティ・リンク・リースなどにより後押しすることで、日本全体における脱炭素の意識向上に貢献したいと考えている。

 

SMFLグループの強みは、各企業の環境意識のレベルに応じた、様々な商品・体制を整備している点にある。例えば、顧客企業と締結するリース契約を通じリース料の一部を脱炭素に資する活動を行う認定NPO法人等へ寄付するSDGsリース『みらい2030®』(寄付型)、最新のLEDといった導入しやすい省エネ設備の導入サポート、脱炭素化に向けた導入・更新予定の設備について最適な補助金活用のアドバイスやファイナンス提供、自家消費太陽光発電の導入方法の提供(PPAモデル含む)等。さらに、サステナビリティ・リンク・リースの案内を通じて顧客企業の脱炭素に向けた目標を確認し、様々な商品を通じて顧客企業の脱炭素取組に協力することで目標設定の意識を引上げ、日本全体における脱炭素に貢献し、サステナブル関連ビジネスの拡大を目指している。

 

課題と課題解決のヒント、工夫した点、苦労した点

顧客企業による目標設定の段階において、多くの時間を費やす必要がある。成約に至った案件や成約に向けて進行中の案件は、中小企業のなかでも環境意識の高い企業の案件である。しかしそれでも、日本政府が設定した温室効果ガス排出削減目標にまで数値目標を引き上げるのは、大企業とは異なり、資金や人材等の面で厳しいという状況にある。SMFL としては、出来得る限りの創意工夫により、さらに高い目標値の設定が可能かどうかについて、半年から1年ほどの時間をかけた対話を通して検討してもらい、目標値の引上げに努めている。

 

そのため、多様な環境問題に関する十分な知識を持ち、中小企業との丁寧で地道な対話能力に長けた営業担当者の育成にあたっている。

 

参考にしたWEBサイト等