活動内容

平成27年度(2015年度)選定結果

東南アジアでの「天候インデックス保険」の提供
─損害保険ジャパン日本興亜株式会社─

天候インデックス保険とは、気温、降水量、日照時間などの天候指標が、事前に定めた一定の条件を満たした場合に定額の保険金をお支払いする保険商品です。

 

■タイでの天候インデックス保険の提供

稲作農家の干ばつ被害の軽減を目的とし、タイ気象局が発表する累積降水量が一定値を下回った場合に一定の保険金を支払う保険を提供しています。2007年から国際協力銀行(JBIC)などとともに気候変動に対応するリスクファイナンス手法の研究を進め、2010年からタイ東北部で提供を開始しました。商品開発にあたっては、農家の意見などもヒアリングしながら現地調査を繰り返し、保険に馴染みのない農家の方々向けにシンプルな商品を実現しました。また、安心してご加入いただくために、わかりやすいパンフレットの開発にも力を注ぎました。商品の募集は、下図のとおり、タイ農業協同組合銀行(BAAC)のローン利用者向けにBAACを通じて行っています。2012年に干ばつが発生した際には加入者の80%以上の農家に保険金を迅速にお支払いした実績が現地で高く評価され、販売開始時はタイ東北部の一部で販売していたものが、現在はタイ東北部全域まで販売対象範囲が拡大しています。

 

 

■他の東南アジア諸国への展開、対象作物の多様化に挑戦

ミャンマー: 中央乾燥地帯の米農家とゴマ農家を対象に、干ばつリスクに対応した天候インデックス保険を2014年12月に開発しました。(一財)リモート・センシング技術センター(RESTEC)と共同で開発した、人工衛星から推定された雨量をインデックスとして活用した保険であり、日本初の開発事例です。発展途上国では、保険の開発と運営に不可欠な気象観測所と気象データに関するインフラの未整備が課題となっていますが、RESTEC と人工衛星データを活用した天候インデックス保険の開発に成功したことで、その他の東南アジア諸国においても新たな技術を通じた開発可能性が広がりました。

 

フィリピン: 農業生産者を対象に、2014年から天候インデックス保険の一種である「台風ガード保険」の販売を開始しています。「台風ガード保険」は、台風の中心があらかじめ定めた対象エリアを通過すれば、一定の保険金が支払われる保険で、台風の通過を条件としたインデックス保険が販売されるのはフィリピン保険業界初となります。

 

インドネシア: 天候インデックス保険の開発・販売に向けた現地調査を、国際協力機構(JICA)の支援を受けながら2015年度より開始しています。

 

■国連開発計画が主導する「ビジネス行動要請(BCtA)」に認定

「天候インデックス保険」は、国連開発計画(UNDP)が主導する、商業活動と持続可能な開発を両立するビジネスモデルの構築を促進する「ビジネス行動要請(BCtA)※」に応える取組みとして、2015年7月に認定されました。これは日本の金融機関として初、世界の損害保険グループとして初の認定になります。

※ビジネス行動要請(BCtA:Business Call to Action):2008年に発足した国連開発計画(UNDP)を含む6つの開発機関・政府が主導する、長期的視点で商業目的と開発目的を同時に達成できるビジネスモデルの構築を促進する取組みです。

 

 

選定理由

  • 昨年度末にCOP21で採択された「パリ協定」では、世界共通の長期目標として、産業革命前からの地球平均気温上昇を2℃より十分下方に保持することを目指す「2℃目標」や、気候変動の悪影響に対する適応能力の強化等が謳われた。今後、金融界でも、「パリ協定」の趣旨に対応した取組がさらに求められると考えられる。
  • 同社の取組事例には、これまでの同社の事業を通じて蓄積されたリスク評価等のノウハウを用いて商品開発を実施しているなど、同社の本業である「保険」を通じて、気候変動の悪影響に対する適応に関し、社会に貢献する姿勢が認められ、この点を特に評価すべきである。
  • また、同社の取組事例は、気候変動の悪影響に対する適応の取組として、農業を主な産業とする東南アジア各国において大きな期待が寄せられており、2010年から取組を実施してきた実績がある。この点、「パリ協定」に先立ち適応の取組を実施してきたという先進性も認められる。
  • 加えて、2010年にタイ北部で「天候インデックス保険」を販売して以来、ミャンマー・フィリピン・インドネシアにおいても地域性を踏まえた商品開発・販売を実施しており、継続的かつ国際的な広がりのある取組として、今後さらなる発展が期待される。
  • 以上の理由に加え、我が国における更なる同種の取組への期待を込めて、本事例を第4回グッドプラクティス最優良取組事例に選定した。

 

 

最優良取組事例選定委員会委員
  • 委員長 UNEP FI特別顧問 末吉 竹二郎 氏
  • 委 員 慶應義塾大学環境情報学部特任教授 小林 光 氏
  • 委 員 高崎経済大学経済学部教授 水口 剛 氏
  • 委 員 環境省総合環境政策局環境経済課長 奥山 祐矢 氏