資 料

いちご株式会社
RE100企業として「2030年に再エネ比率50%」目標設定への賛同

(2024年3月作成、4月公表)

背景・目的

欧米諸国の建物の平均寿命が約100年であることに対し、日本では、30年前後で半数が取り壊され、建て替えが行われているが、不動産の解体や材料の廃棄、新たな建築のための材料製造における消費エネルギーは膨大である。

 

いちご株式会社は、日本を世界一豊かに、という経営理念を掲げており、金銭的な豊かさのみではなく、心の豊かさも含め、豊かな社会形成を目指している。経営理念の実現に向け、同社のコアコンピタンスである心築(しんちく)を通じ、省資源、高効率な事業を展開している。

 

同社は、長期VISION「いちご 2030」において、従来の心築を軸とした事業モデルをさらに進化させ、「100年不動産」へチャレンジするとともに、地域および地球にやさしいクリーンエネルギー事業を積極的に推進している。また、「いちご2030」において、コアコンピタンスである心築をさらに進化させ、人や企業を主役として捉え、不動産を人々に不可欠で、豊かな生活を支える社会インフラとして価値創造していくことを掲げ、サステナブルインフラ企業としての発展を目指している。

 

なお、「心築」とは、「心で築く、心を築く」を信条として、同社の技術とノウハウを活用し、一つ一つの不動産に心を込めた価値向上を図り、現存不動産に新しい価値を創造する事業を指す。具体的には、主に好立地の中規模不動産を取得し、遵法性の治癒や耐震補強、稼働改善等とともに、不動産の持つ本来の価値を活かしながら、多様化するニーズに合わせた価値向上や経済耐用年数の長期化を図るといったアクションを指す。

 

概要

「サステナブルインフラ企業」を達成するための一環として、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際的なイニシアティブである「RE100」に加盟し、「脱炭素宣言」した。また、同社では野心的に「2025年までに事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーにする」ことを目標として掲げている。

 

また、2021年9月には、国連グローバル・コンパクト(UNGC)のパートナーであるWe Mean Business Coalitionがパリ協定で目標とされている「平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑える」ことを実現するため、G20首脳に向けた公開書簡により、さらなる発展的な取組を行うよう提言した際には、同社も世界のUNGC加盟企業とともに、これに賛同、署名している。

 

実績

いちご株式会社は、いちごECOエナジー株式会社を設立し、地域および地球にやさしいクリーンエネルギー事業を積極的に推進している。クリーンエネルギー事業では、遊休地の有効活用として、主に太陽光発電、風力発電を全国に展開している。2022年3月15日時点でいちご株式会社が保有する再生可能エネルギーの発電容量は合計169.6MWで、またいちごグループが運用するいちごグリーンインフラ投資法人が保有する再生可能エネルギーの発電容量は合計29MWに達し、いちごグループが保有・運用する発電所は、合計で199MWである。2017年2月の発電容量54.2MWから5年で4倍弱に急増している。

 

2023年8月末時点で、いちごグループおよびいちごオフィスリート投資法人、いちごホテルリート投資法人の実績として、再生可能エネルギーへの切り替えが72%まで進んでいる。一方、クリーンエネルギー事業では、グループ全体の事業において、再エネ切替をしなかった場合のCO2排出量に対して、約1.6倍のCO2削減を実現している(ただし、クリーンエネルギー事業における環境価値は、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)対象期間、外部売却されているため、同社グループのCO2削減には寄与していない)。

 

同社ではスコープ1及び2のみならずスコープ3の排出も計測しており、2019年度比で、2021年度のスコープ1、2、3のGHG(温室効果ガス)排出量を約半減させた。

 

取組を実施するにあたっての組織の方針や体制

最高経営責任者の代表執行役社長(CEO)がサステナビリティの推進における責任者となり、取締役会が監督するいちご企業倫理綱領およびサステナビリティ方針に基づき、同社グループの業務執行を統括している。

 

また、いちご主要会社で年に4回、(10~15名で構成される)サステナビリティ会議を開催し、気候変動の重要課題について気候関連のリスクと機会の特定•評価、エネルギー使用量やその他の水や廃棄物等の排出状況をモニタリングし、方針や目標の設定、および具体的な施策を検討している。本年度は分科会も開催し更に議論を深める体制とした。活動状況は四半期ごとに取締役に報告、また、内部統制システム構築基本方針に基づき、最高執行責任者(COO)、推進部を通じて、事業年度終了後に一度取りまとめ、CEOは監督機関である取締役会へ報告している。

 

社内研修に関しては、不動産業に関する講座だけでなく、イノベーティブな思考力・発想力・ITリテラシーを強化するような講座、社会トレンドを知る講座など、これからのサステナブルな未来に必須なスキルをアップさせる講座を開講しているいちご大学を活用し、環境への取組について役職員への啓発活動を展開している。

 

取組の今後の計画・広がりについて

同社では「2025年までに事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーにする」ことを目標に掲げているが、これはScope2にあたる目標である。同社では、パリ協定の目標に準じた削減目標(「世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回り、また1.5℃に抑える水準」としてSBT(Science Based Targets)に準じたScope1、2、3の削減目標)の策定を行っているところである。また、今後は脱炭素以外のサステナビリティ分野として、生物多様性に関しても注力する予定である。

 

課題と課題解決のヒント、工夫した点、苦労した点

脱炭素への取組については、自社のエネルギーデータ等を正確に把握する必要があるが、事業形態の多様化に対応しつつ全社のデータを集計していくことに課題を持っている。特にScope3の算定の中でも、カテゴリー11(販売した製品の使用)については、売却した物件について、売却後のGHG排出量をコントロールすることが困難であり、事業モデル上削減が難しいため苦労している点である。エネルギーデータの集計システムを導入し、効率化を図る予定である。

 

参考にしたWEBサイト等