活動内容

2022年度 環境大臣賞 総合部門1

インパクトビジネスの展開
─三井住友トラスト・ホールディングス 株式会社─

概要

  • 三井住友トラスト・ホールディングス株式会社は、パーパス「信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる」をもとに、能動的に社会的リターンを追求するインパクトビジネスを幅広く展開している。
  • UNEP FI(国連環境計画金融イニシアティブ)が発表したポジティブインパクト金融原則の趣旨に賛同し、資金使途を特定 しない事業会社向け融資商品のガイドラインに基づき、2019年3月には「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の商品化 を行った。その後、株式投資ファンドの開発や各種アドバイザリー業務の受託など、以下のような様々な取引先と幅広いインパクトビジネスを展開している。

     

    • (2019年 3月)三井住友信託銀行が、不二製油グループ本社に対し資金使途を特定 しない事業会社向け融資としてポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施。(コーポレートファイナンス)
    •  (2019年10月)三井住友トラスト・アセットマネジメントが、日本株式インパクト投資ファンドを開発、2020年に商品化。(株式投資)
    •  (2021年3月) 三井住友信託銀行が、アンカー・シップ・パートナーズ社に対し船舶を対象としたインパクト分析サービスの提供を開始。(リアルアセット投資へのアドバイザリー業務)
    •  (2021年4月) 三井住友信託銀行が、リアルテック社が運営するVCの投資先を対象とした科学的根拠に基づいたインパクト分析サービスの提供を開始。(ベンチャーキャピタルへのアドバイザリー業務)
    •  (2021年11月)三井住友信託銀行が、将来のインパクトファイナンス導入の観点から参画を開始した金沢大学がリーダーを務めるプロジェクト「再生可能多糖類植物由来プラスチックによる資源循環社会共創拠点」がJST共創の場形成支援プログラム「COI-NEXT(共創分野本格型)」に採択される。(アカデミアとの協働、知見の提供)
    •  (2022年4月)三井住友信託銀行が、政策保有株式の売却により創出された資本余力を活用し、自己資金で2030年度までに累計で5,000億円のインパクト・エクイティ投資の取組を本格的に開始。自己資金による投資を契機として、他の機関投資家によるエクイティ投資を呼び込むことにより、2030年度までに自己勘定投資と投資家資金の合計で2兆円エクイティ資金供給を目指す。
    •  (2022年7月)三井住友信託銀行が、小田原市の再生エネルギー地産地消事業の地域社会に対するインパクト評価を実施し、同市ホームページにレポート(横浜銀行、浜銀総研と協働)を掲載。地域住民や企業の行動変容を促す。(自治体へのサービス提供)
    •  (2022年11月)三井住友信託銀行がインパクト評価を行い、当社の複数の融資及び地域金融機関がその評価を活用して融資を行えるスキームが2022年度環境省「グリーンファイナンスモデル事例創出事業」モデル事例に選定される。これにより、個別融資、融資期間に捉われず企業単位で長期的なインパクト目標の設定・測定・管理が可能となる。(地域金融機関との協働)
    •  (2022年11月)三井住友信託銀行が、アミタホールディングス株式会社と、互助共助コミュニティ型の資源回収ステーション「MEGURU STATION®」を対象に、インパクト評価を共同で実施し、当該取組を加速化することについて合意。(企業へのアドバイザリー業務)

 

実績

  • インパクト志向金融宣言の定義に基づく、当グループ全体のインパクトファイナンス(投融資)の取組残高(2022年9月末現在)は以下のとおり。狭義インパクトファイナンスは2,329億円、広義インパクトファイナンスは7,176億円。

     

    単位=百万円 環境 社会 環境+社会 合計
    カテゴリー2 15,371 398 217,156 232,925
    カテゴリー1 359,572 250 124,900 484,722
    合計(1+2) 374,943 648 342,056 717,647

    ※カテゴリー1:インパクト創出の意図・戦略があり(ポジティブインパクトだけでなく重大なネガティブインパクトの特定を含む)、その上でそれらのアウトカムを測定している(アウトカム測定が難しい場合はアウトプットの測定)
    ※カテゴリー2:(1に加え)特定されたポジティブなインパクトの創出および重大なネガティブインパクトの緩和に向けた「マネジメント」を実施

 

「21世紀金融行動原則」の7つの原則への対応とアピールポイント

原則(1)
  • 投資はボトムアップ(インパクトファイナンス事業の展開)とトップダウン(パーパスを踏まえた会社としてのインパクトの創造)を両立させ、インパクト志向金融を目指している。当社のパーパスは、ポジティブインパクトの創造(ネガティブインパクトの抑制)を目指すものに他ならない。

原則(2)
  • カーボンニュートラルなどの持続可能社会の構築には、イノベーション技術の社会実装は不可欠である。しかし、その実践には、個々の技術がどのようなインパクトを創出するかについてのコンセンサスは不可欠であり、インパクトビジネスは、単なる評価にとどまらず、評価を合意形成に活用する意味でも有益である。当社がさまざまステークホルダーとインパクト評価で協働しているのは、そうした視点を踏まえている。

原則(6)
  • 脱炭素や資源循環は最適なサプライチェーンなしに実現し得ないと考えている。インパクト評価は、サプライチェーンのどのポイントにどういう技術を投入すれば最適な成果が得られるか、その回答を見出すものでもある。当社は理系の専門部隊(テクノロジー・ベースド・ファイナンス)を擁する。科学的知見に立脚したインパクト評価ができることは、当社が他社との大きな差別化につながっている。

     

原則についての説明はこちら

 

選定理由
  • サステナブルファイナンス分野ではである同社が、国内のインパクトファイナンスを先導しようという本気度を感じる取組である。
  • 地域金融機関を含め国内においてもインパクトファイナンスに関心が高まっているが、この取組は今後の日本の金融機関にとってモデルになるものである。
  • インパクト金融志向宣言や金融庁勉強会などへの参加など、インパクトファイナンスに関する研究や普及に取組む意識の高さも評価できる。
  • 2022年9月末現在7,176億円という実績を達成していることは、経済的なリターンと合わせ社会的リターンを追求するインパクトファイナンスが、持続可能な社会への歩みを早めるために金融機関が主体的な役割を果たすことを体現している。

 以上の理由から本取組を環境大臣賞に選定する。

 

 

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