サステナブル・ファイナンス推進及びESG要素を考慮した事業性評価の取組
─株式会社千葉銀行─
概要
- 株式会社千葉銀行では、取引先である中堅・中小企業のサステナブル経営の推進・支援を目的に、中堅企業向けに「ちばぎんSDGsリーダーズローン」、中小企業向けに「ちばぎんSDGsフレンズローン」を提供するなど、企業規模に応じた幅広いファイナンス商品を取り揃え、サステナブル・ファイナンスを推進している。
- 本取組は、地方銀行の取引先である中堅・中小企業にとって、国際原則等に適合したサステナビリティ・リンク・ローンやグリーンローンなどは、フレームワーク構築や評価費用の負担が過大であり、利用のハードルが高いという現状に対応しようという取組である。
- 1)企業規模に対応した「サステナブル・ファイナンス」商品の推進
- 中小企業やSDGs達成に向けた取組に対して経験の浅い企業等に対しては、SDGs達成に向けた取組を支援する「ちばぎんSDGsフレンズローン」、中堅企業等に対しては、国際的な原則・ガイドライン(以下、「諸原則等」)への「整合性」をグループ会社である株式会社ちばぎん総合研究所が評価する「ちばぎんSDGsリーダーズローン」、大企業に関しては、諸原則等への「適合性」を外部評価機関が評価する「ちばぎんグリーンローン」「ちばぎんサステナビリティ・リンク・ローン」等を中心に推進している。また、2022年8月には、「ちばぎんポジティブ・インパクト・ファイナンス」も制度化し、商品の幅を広げている。
- 2)ESG要素を考慮した事業性評価の実施
- 2022年5月より、取引先のSDGs達成に向けた取組状況等について、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)の観点での把握を行うため、独自に開発した「ESG評価シート」を活用し、事業性評価を実施すると同時に、温室効果ガスの排出量の把握に努めている。2022年度上期は、アドバイザリー特定先と呼ばれる各営業店の中核となる取引先に対して同シートの作成を行ったが、2022年度下期は、ESG評価シート作成対象先を脱炭素の観点で高リスクと考えられる多排出産業を中心とするなど、企業規模や対象業種に応じて徐々に対象を広げている。
- 本ツールを通じて取引先との対話を促進し、取引先における将来のリスクと機会を特定することで、中長期的な経営課題や潜在的な資金需要等を把握すると同時に、関連部と連携して脱炭素化等に向けたソリューション提案を積極的に行っている。
実績
- サステナブル・ファイナンス実行額 2022年9月末時点実績: 0.80兆円(うち環境系ファイナンス0.31兆円) 目標に対する達成率40%(環境系ファイナンス31%)であり、巡航速度(29.2%)を上回る進捗
- ESG評価シートの作成先 2022年9月末時点実績:762先(2022年度下期作成予定先:933先)
「21世紀金融行動原則」の7つの原則への対応とアピールポイント
原則(3)
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地域事業者に対し、ESG要素を加味した事業性評価を行い、それぞれの事業内容や経営上の課題に則したサステナブル・ファイナンス商品の提案やコンサルティング支援を実施することで、地域事業者の環境・社会・経済における課題解決をサポートし、持続可能な地域社会の形成をリードしている。
原則(6)
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融資先企業等のSDGsや脱炭素への取組状況についてアドバイザリーを含む積極的な対話を行い、啓発・啓蒙に努めるとともに、ファイナンス支援を通して持続可能なサプライチェーンの構築に貢献している。
原則(2)
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大企業・上場企業に対しては、諸原則等に適合したグリーンローンやサステナビリティ・リンク・ローン等を中心に提案・提供を行い、顧客企業のサステナブル経営の支援・企業価値向上に努め、脱炭素社会に向けた着実で公正なトランジションを支援することにより持続可能なグローバル社会の形成に貢献している。
選定理由
- 本取組はESG評価をもとに融資するという、どの地域金融機関にもお手本として実践してもらいたい正統派のものである。
- 本取組のような地道な取組を拡大していくことで、企業と連携したサステナブルな地域社会を創っていくという本気度が感じられる。
- 日本各地、特に高齢化や厳しい経済など様々な課題に苦しむ地域を起死回生させることにつながる可能性がある本取組を他機関の行動を促す取組として環境大臣賞に選定する。