地域資源を活用した木質バイオマス発電事業への取組み
─株式会社北都銀行─
概要
- 平成27 年3 月に、ユナイテッドリニューアルエナジー株式会社(秋田県秋田市)による秋田県内の未利用間伐材などを活用した木質バイオマス発電事業について、同行を中心に秋田県内の金融機関を含めた9社により総事業費125 億円のうち総額106 億円の協調融資(プロジェクトファイナンス)を組成。
- 木質バイオマス発電所の周辺雇用(本発電所における雇用、燃料となる木質チップ工場における雇用)等の経済波及効果をはじめ、間伐実施による環境保全や林業の活性化(人材育成)など、事業総体での地域活性化に貢献する事業。
取組のアピール点
- 社会ニーズへの対応
県土の約7割が森林を占める秋田県は、杉の生産量は日本一であり、一方で、間伐材から出る約3割の未利用材が森に捨てられており、新たな植樹等も出来ず、土砂崩れの原因にもなっていたため、当該事業は間伐材等の整備促進等の環境保全にも貢献。 - 事業モデルの革新性と持続可能性
これまで捨てられていた未利用材を、相場より高めの価格で発電事業者が購入し、山側に十分な利益を提供する一方で長期間の供給契約を締結。当該事業に対し、特別目的会社を設立しその事業収益のみを返済財源とするプロジェクトファイナンスのスキームを活用。 - 地域経済への効果
当該事業の20年間の経済波及効果は501億円、雇用効果は4,710人と試算。加えて、平成27年に開校した林業学校の1期生18名が、県内の森林組合、林業会社、木材加工会社などに就職。新しい雇用の創出、教育分野、若者の県外流出防止に間接的に貢献。 - 協働の実現
秋田県内でのバイオマス発電事業化のために国のサービスを活用し、各所(産学官金)からの支援を受け、当該事業実現に向けた研究会発足から3年5ヵ月で運転開始を果たす。 - 国内他地域への展開
全国のバイオマス発電所にO&Mサービスの提供を目指すべく、秋田で育成した人材を全国へ派遣する取組みを展開。
該当原則
原則1 原則4 原則5(原則についての説明はこちら)
選定理由
- 高齢化社会、人口減少、また経済の再生は地方の喫緊の課題であり、地域金融機関が果たす地域経済への貢献が期待されている。地域経済の活性化のためには、地域金融機関は従前のビジネスモデルに頼るのではなく、地域のサステナビリティを勘案しながら新しいビジネスモデルを構築する等の取組が有効と考えられる。地域の循環型社会に貢献する本取組は、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも評価できる。
- 特に、東南アジア等の原産地での環境問題の懸念が残るPKS(パームヤシ殻)について、使用率を最大で30%に抑え、原産地での環境調査を取り入れるなどして、主燃料たる県産チップの補助燃料と位置付けたことに対して評価したい。また、県産チップの利用増加は、地域経済・雇用の拡大や森林整備等に繋がるものと考えられる。
- 以上の理由に加え、同行の取組みは、地域金融機関の視野を広げる事例であると言え、我が国における環境金融の普及・促進につながる好事例となることに期待を込めて、本事例を第6回最優良取組事例に選定した。