「21世紀金融行動原則」に署名している金融機関は、7つの原則にのっとりさまざまな取組を展開しています。このような取組の裾野を広げ、先進的な取組の向上を図るため、2014年度から最優良取組事例を選定、環境大臣賞として表彰しています。また、2017年度より従来の大臣賞を「総合部門」とし、新たに「地域部門」を設置。大臣賞に準ずる優れた取組を選定し、21世紀金融行動原則運営委員長賞として表彰しています。
今回の「受賞機関インタビュー」では、この記事をご覧になっているPFA21の窓口担当者の皆様に本表彰事業をより身近に感じていただくことを趣旨として、応募時の苦労話や受賞後の機関内外の変化、事例のその後の展開や進化を具体的に紹介いただきます。
風力発電事業の産業化および脱炭素社会実現に向けた北都銀行の挑戦
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最優良取組事例の2021年度の授賞式の模様はこちら
佐藤様(左)と大山様(右)
聞き手:事務局
担当者:
営業推進部 地方創生室 室長 佐藤貴幸様
経営管理部 広報CSR室 アシスタントマネージャー 大山慎吾様(受賞当時担当者:マネージャー 古木尚志様)
――受賞当時、窓口担当者だった古木さんが異動されたため、後任の大山さんにお伺いします。応募時、どんな点に苦労されたと古木さんはおっしゃっていましたか?
大山様:地域金融機関として脱炭素化に向け取り組んできた「北都グリーン・アクション」の事例を応募するのは初めてだったので、体系立てて整理することに苦労したと話しておりました。
――再エネ支援は2012年から取り組まれていますが、2021年1月「北都グリーン・アクション」を策定、地域を巻き込んだ脱炭素化に力を入れ始められたのですね。
佐藤様:はい。2012年以前、秋田県に設置されている風力発電の発電所は、県外の企業によるプロジェクトが多かったのです。そこでまずは秋田県の地元企業に還元するため、地元企業と連携し風力発電事業専門会社を設立しました。風力発電所事業を開発・ファイナンスの両面から支援するという構図です。は初めての経験だったので、すべてが手探りの状態でした。
――手探りで始めてきたことの実績を、応募のために改めて整理されたのですね。御行は2017年度に「地域資源を活用した木質バイオマス発電事業の取組み」でも環境大臣賞(地域部門)を受賞され、今回は2度目の受賞です。表彰事業への応募は通年の業務として組み込まれているのでしょうか。
大山様:そうですね。当行の取組をアピールすることは広報CSR室が窓口となります。環境に関する取組は当行の特色・強みでもあり、環境大臣賞を受賞することは、県内でも明るい話題のひとつです。当行が地域の銀行として取り組んでいることを地元のお客さまに発信する意味でも大変重要で、他部門と連携して進めています。
――取組の実績として、応募資料に「地域金融機関として地方創生の観点で秋田県内の再生可能エネルギー事業へ積極的に融資を拡大し、2021年3月末の再エネ向け融資残高は617億円(事業性融資の15%)」とありますが、こちらの数字は当初から目標とされていたのでしょうか。
佐藤様:いいえ、目標設定していた訳ではありません。当初の背景には、首都圏一極集中が進み、地域の資金需要はなかなか伸びない中、さらにリーマンショック後という状況でした。県全体の経済成長も思わしくなく、将来を見通しても人口減少や企業経営者の高齢化など多くの地域課題がありました。当行は地域発展のためにシニア、環境、福祉、農業の6次化などの成長分野を積極的に支援していく中で、「風」という地域資源を生かした風力発電事業にも力を入れていたことが、この成果に繋がりました。
――そうだったのですね。現在、秋田県の風力発電の導入量は、他県と比べていかがでしょうか?
佐藤様:県内には300基を超える風力発電機が設置されており、風力発電導入量では、64万8千キロワットで青森県に次いで全国第2位です。[1]
――佐藤さんは再生エネルギー事業に長年携わられているとのことですが、秋田県が持つ再生エネルギーの可能性について、どのように感じていますか?
佐藤様: 秋田県は65 歳以上人口の割合が37.5%と日本で最も高く[2]、少子化も進んでいます。このままでは経済も縮小する一方なので、新たな産業を生み出していくことは重要な課題のひとつでした。
そこで、秋田県がもともと持っている豊かな自然に着目すると、再生可能エネルギーの大きな可能性があります。県の面積の約7割は森林なので、その資源は木質バイオマス発電に活用できます。また、日本海側から安定した風が吹き、平地も多いため発電機の設置がしやすく風力発電に適しています。海岸は遠浅の海が続いており、洋上風力においても発電機の設置がしやすいのです。山もあり地熱や水力も期待できます。秋田県は大きなポテンシャルがあると感じています。
――最後に今後の取組について、意気込みをお願いします。
佐藤様:北都銀行の行員はほぼ県内出身者で、一人ひとり地元に対する想いが強く、地域の活性化を心から望んでいます。現在秋田県沿岸で進む洋上風力発電事業は総額1兆円規模の設備投資ですが、そこで働く人や物の流れに関わる経済効果も相当期待できます。地元で実施される再生可能エネルギー事業に地元企業が関わり、お金が地元に循環し、地域活性化につなげていきたい、地元企業の参入支援は私たちのミッションです。大臣賞受賞によって、認知度が高まり、お客様からのご相談も増えるので、今後も応募にチャレンジし、このサイクルをつくっていきたいです。
大山様:地域やお客様あっての地域金融機関なので、広報担当者として、今後も地域やお客様の価値向上に役立つ情報と課題解決に向けた弊行の挑戦を発信していきます。
―――また新たな事例でご応募お待ちしております。この度はお忙しいところ、ありがとうございました!
(2022年8月オンラインにてインタビュー)
[1] 日本風力発電協会「日本の風力発電導入量(2021 年 12 月末時点)」都道府県別 風力発電導入量(公開終了)
日本風力発電協会「2023年12月末時点日本の風力発電の累積導入量」
リンク(dounyuujisseki2023graph_hp用)より
2023年12月末の都道府県別導入量や平均出力推移等のグラフが掲載された
「【速報版】日本の風力発電導入量(2023年12月末時点)」をダウンロードいただけます。
[2] 令和2年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要P24