「21世紀金融行動原則」に署名している金融機関は、7つの原則にのっとりさまざまな取組を展開しています。このような取組の裾野を広げ、先進的な取組の向上を図るため、2014年度から最優良取組事例を選定、環境大臣賞として表彰しています。また、2017年度より従来の大臣賞を「総合部門」とし、新たに「地域部門」を設置。大臣賞に準ずる優れた取組を選定し、「特別賞」として選定委員長賞、21世紀金融行動原則運営委員長賞として表彰しています。
2021年度最優秀取組事例の募集に際し、2020年度選定委員長賞 地域部門を受賞された京都信用金庫様に、受賞対象となった事例とその後の取組についてお話を伺いました。
様々な人の『?』が集まる場所「QUESTION」の開業
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聞き手:事務局
担当者:
京都信用金庫
QUESTION館長 森下容子様
――今回の受賞事例である「QUESTION」という施設を作るきっかけを教えてください。
もともとは旧ビルの1階と2階に京都信用金庫の河原町支店が、その他の階は関連会社が入っていました。ビルの老朽化に伴い、6年ほど前から建て替えをする構想がありました。準備室を開設したのは2019年4月です。これまで金融機関の役割として「決済機能」や「仲介機能」はありましたが、これからの時代はその2つに加え、お客様の事業の課題や地域社会の課題を解決する「課題解決機能」が重要だという結論に至りました。お客様の事業の伴走支援の延長線上に「QUESTION」がある、というイメージです。
「QUESTION」は2020年11月に新設された、地域の課題を解決するコミュニティビルディングです。1階は京都芸術大学の学生が運営するカフェ&バーと起業家や企業が新商品をテストマーケティングできる「チャレンジスペース」、2階と3階は会員制のコワーキングスペース、4階はオンラインやリアルでのセミナー・イベントを開催できる場です。5階は学生と地域の企業がつながり、学生が考えた企画や就職の支援を行っています。そして6階に京都信用金庫 河原町支店、7階は最大130名収容できる大きな会議室でイベントなども開催でき、8階には約100名収容できる飲食スペースとシェアキッチンがあり、食に関するイベントや体験ができる場所となっています。
――それぞれの地域課題は、どのように吸い上げて、プロジェクト化しているのでしょうか?
まず、地域課題を解決したい「QUESTION」の利用者が、「QUESTION」のWEB上にある「問いの掲示板」にメールを送ります。お客様の課題解決におせっかいを焼く、コミュニティマネージャーがそのメールを受け取り、先駆者であるアソシエイトパートナー(2021年10月現在は80人ほど)と情報共有をします。そして、ビジネスマッチングの提案や、プロジェクト組成など、48時間以内になんらかの回答をして、課題解決のスピードを上げる工夫をしております。
――「問いの掲示板」第一号である、綿菓子店の事業承継について教えてください。
京都の有名な綿菓子店の税理士から、新会社を設立して事業を承継したいという投稿をいただいたことがきっかけで、2021年の1月、京都芸術大学の学生によるプロジェクトがスタートしました。同年4月に法人化し、5月にブランドを引き継いで新会社を設立。融資にまでつながりました。
京都市は人口の約1割が学生で、全国的にも学生が多い町です。しかし、大学を卒業すると、その7〜8割は京都から他の街に出てしまい、それは大きな地域課題のひとつになっています。京都に住む学生に地域の課題を一緒に考えてもらい、卒業しても地域に根付いてプレイヤーとして活躍していただきたいと願っています。
――「QUESTION」を活用して、地元の百貨店である大丸京都店と一緒にクラウドファンディングの支援もされたとのことですが、金融機関としてクラウドファンディングを支援する意図を教えてください。
事業者が継続的に事業を続けていくには、金融機関からの融資だけでなく、ファンづくりがとても大切です。大丸京都店は「QUESTION」のアソシエイトパートナーであり、「京都の魅力向上に寄与する事業者支援に向けた業務契約」を締結している、京都の盛上げを行うパートナーです。これまでは起業してからの金融支援が多かったのですが、これからは情報と情報、人と人をつなぎ、企画の立ち上げ段階から関わっていくことが重要だと考えています。人が元気に、街が元気になってこそ、金融サービスが必要とされるのではないでしょうか。公益のために何ができるのか、長いスパンで考えて未来に投資をしています。
――今後のお取組にも期待しています。ありがとうございました。
(2021年11月オンラインにてインタビュー)