「21世紀金融行動原則」に署名している金融機関は、7つの原則にのっとりさまざまな取組を展開しています。このような取組の裾野を広げ、先進的な取組の向上を図るため、2014年度から最優良取組事例を選定、環境大臣賞として表彰しています。また、2017年度より従来の大臣賞を「総合部門」とし、新たに「地域部門」を設置。大臣賞に準ずる優れた取組を選定し、「特別賞」として21世紀金融行動原則運営委員長賞として表彰しています。
2021年度最優秀取組事例の募集に先立ち、2020年度環境大臣賞 地域部門を受賞された浜松磐田信用金庫様に、受賞対象となった事例とその後の取組についてお話を伺いました。
地元企業ビジネスマッチングを通じて地域に広げるSDGsの輪
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最優良取組事例2020年度の授賞式の模様はこちら
聞き手:事務局
担当者:SDGs推進部 副部長 竹内嘉邦様
SDGs推進部 SDGs企画課 課長 篠田考一様
SDGs推進部 SDGs企画課 係長 市川純子様
――今回の受賞は、従業員の方々にどのようにご紹介されましたか?
社内では、月に1回ほど不定期で『SDGs News』という金庫職員向けSDGs啓発の庫内報を出しており、今回の受賞の件はこちらに掲載し、全職員に向けて発信いたしました。受賞したことそのものはもちろんのこと、それ以上に重要なのは受賞の“内容”だと感じます。ですから、今後も地元の企業、お取引先等いわゆるステークホルダーとともに、さらに地域に貢献しましょうという決意も掲載しました。
――今回、大臣賞に選定された取組は、地元企業のビジネスマッチングです。その一つの事例として、森林エコ活動に協力している就労継続支援B型作業所「特定非営利活動法人せきれい」(以下「せきれい」)と、建設・土木工事業の「株式会社丸源竹内組」(以下「丸源竹内組」)の2社を取り上げられました。今回の受賞に関し、両社の反応やその後の状況はいかがでしょうか?
せきれい様と丸源竹内組様へは、支店の担当者からも私からも受賞の報告させていただき、両社ともに大変喜ばれました。
せきれい様は、もともと地元産木材で割り箸などを加工し製造販売している企業ですが、新型コロナウイルスの影響で、取引先の飲食店が厳しい状況に陥り、割り箸の需要が低下してしまいました。しかし、引き続き我々がビジネスマッチングの情報交換を行ったところ、地域の高級洋菓子店との新しい取引につながりました。間伐材や端材を原料にした贈答品用の箱を、せきれい様が受注することになったのです。
丸源竹内組様は、同社の遮熱塗装を導入した取引先に、カーボンオフセット証明書が発行される仕組みをもっており、その証明書を入れる額縁をせきれい様に発注されています。今回の受賞の件を自社のパンフレットに記載しPRすることで、環境に配慮した取組を実施している企業として、その後の顧客とのコミュニケーションに大変役立っているとおっしゃっていました。せきれい様への額縁の発注はその後も継続しています。そして、工場の屋根に施す遮熱塗装の修繕など、大口取引先への販路拡大に効果が出ているそうです。今回の受賞がきっかけとなり、両社ともに実際に受注契約につながっており、これは素晴らしいことだと感じています。
――今回の応募事例はどのように選出されたのでしょうか?
日ごろよりSDGs推進部には営業店より様々な相談があり、協力してビジネスマッチングの案件を進めています。その中でも今回受賞した事例は、信用金庫の役割であり使命でもある地方創生に、環境への取り組みと近時の社会情勢を反映したコロナ渦での課題解決という要素が加わった多面的な意味をもつ事例であったため選びました。受賞につながったのは日ごろから地域の皆様とのSDGsへの取組があってのことで、受賞事例ではない数多くの取組の関係者の皆様全員に感謝をしたいです。
――ビジネスマッチングのDX化を目指されているとのことでしたが、どのように進められているのでしょうか。
弊庫のソリューション支援部では、ビジネスマッチングに特化した社内ネットワークシステムを導入しており、常に全店で情報を共有しています。興味深い企業があれば、オンライン会議や電話などを使い、営業店の担当者同士で自由に意見交換をしています。
――顧客からの経営相談やニーズ、地域課題はどのように吸い上げていますか?
やはり基本に立ち返った事業性評価が大切です。まずは業界全体を俯かんし、その企業の事業や技術力を見て対話と質問を繰り返し、エンゲージメントをしっかり高めます。例えば工場など必ず現場を見学して、財務面・非財務面を知り、顧客の課題を共有します。そしてお客様と課題を共感しながら企業のサポート業務に注力します。そこから販路拡大や社員教育などの課題が見えてくるのです。これが私どもの「伴走型支援体制」です。事業者に深く寄り添えるのは、信用金庫の強みです。地域の課題を発信し、世の中に広めることによって、我々の存在価値も上がると考えています。
── ありがとうございました。
(2021年9月オンラインにてインタビュー)