活動内容

2019年度特別賞(運営委員長賞) 株式会社愛媛銀行

「21世紀金融行動原則」に署名している金融機関は、7つの原則にのっとりさまざまな取組を展開しています。このような取組の裾野を広げ、先進的な取組の向上を図るため、2014年度から最優良取組事例を選定、環境大臣賞として表彰しています。また、2017年度より従来の大臣賞を「総合部門」とし、新たに「地域部門」を設置。大臣賞に準ずる優れた取組を選定し、「特別賞」として21世紀金融行動原則運営委員長賞として表彰しています。

 

2020年度最優秀取組事例の募集に先立ち、2019年度特別賞を受賞された株式会社愛媛銀行様に、受賞対象となった事例とその後の取組についてお話を伺いました。

 

SDGs・ESG推進を通じた企業価値の向上及び地域活性化に向けた取組

取組の概要についてはこちら

最優良取組事例の2019年度の授賞式の模様はこちら

 

株式会社愛媛銀行(左)近藤様(右)村上様

(左)近藤様(右)村上様

2019年に公表した「愛媛銀行SDGs宣言」及び長期ビジョン「ひめぎん10年ビジョン」にSDGsの考え方を取り入れ、中長期的な視点でSDGsと経営戦略の統合を図っており、その具体的取組として、2019年度から新たに「SDGs私募債」、「地域ESG融資促進利子補給事業」の取扱いを開始した。

・SDGs私募債:8件/750,000千円(2020年2月現在)
・地域ESG融資促進利子補給事業:1件/337,700千円(2020年2月現在)
・農林水産業へのファンド支援:6件/60,000千円(2020年2月現在)

 

聞き手:事務局
担当者:企画広報部 近藤崇様、村上陽一様

 

── 御行の歴史から簡単に教えてください。

愛媛銀行の前身は無尽会社です。大正4年(1915年)に設立した東予無尽にさかのぼります。無尽会社は、無尽講や頼母子(たのもし)など経済面の結びつきの庶民金融として発達してきました。その後、昭和18年(1943年)3月に愛媛県下の無尽会社5社が合併し、愛媛無尽株式会社となりました。昭和26年(1951年)10月に相互銀行、平成元年に普通銀行になりました。

 

愛媛銀行は、“相互扶助(助け合い)”や“思いやり”の精神を長い間引き継いでいる第二地方銀行です。当行の基本スタンスは、ふるさとの発展に貢献する「ふるさと銀行」。2019年4月1日には、本業を通じた地域社会への貢献向上のため、「愛媛銀行SDGs宣言」を公表し、経営計画の中に「SDGs・ESG」の考え方を明記しました。

 

── SDGs宣言などに関して、“西日本初”“四国初”などの表現をホームページなどで拝見しましたが、常に地域一番を目指しているのでしょうか?

長きに渡って銀行の枠を超えた取組をしてきたことが、結果的にSDGsという言葉に合致しました。自分たちが変革への挑戦として進化した結果、“西日本初”“四国初”になったものです。常に切磋琢磨して挑戦し続けています。

 

── もともと御行に存在する精神が現状に一致して、結果的に一番になっていたということですね。ありがとうございます。では、「SDGs私募債」を詳しく教えてください。

「私募債」とは中小企業が低コストでまとまったお金を調達するための方法のひとつです。「SDGs私募債」は、当行がお客さまから受け取る手数料の一部を、SDGsの取組を行っている団体へ寄付するものです。当行の「ひめぎん寄付型私募債」には、もともと「教育機関寄付型」「地方創生寄付型」「復興支援型」の3つがありましたが、今回、「SDGs寄付型」を追加しました。

 

── 融資先の事業性評価の中で、地域経済への貢献(社会的インパクト)という非財務価値に着目して融資に取り組むとありましたが、具体的な評価方法はございますか?

現時点で数値的な指標はありません。愛媛県は産業別構成でみると、全国と比較して、第一次産業(農林漁業)および第二次産業(鉱業・製造・建設業)が中心で、第三次産業のウエイトが低くなっています。特産物や地域特性に応じて、その付加価値を高めることが地域の発展のために必要だという考えのもと、ファンドオープンで投資をしています。取組が地域に還元されるかどうか、ということが重要です。

 

── 「地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業(経済産業省)」を活用した課題解決型ビジネスの提案として、実現したいことはありますか?

大都市に比べると、SDGsの言葉はまだまだ浸透していないと感じます。周知のために企業などに出向き、SDGsに関するセミナーを開催させていただくこともあります。現場でSDGsカードゲーム「2030 SDGs」を体験した方の声を聞くと、内容の世界観が広く、どう実際の生活につなげたらいいのかわからないというお話を聞きます。SDGsを自分事として感じてもらい、地域の課題解決につながる様に様々な地域の人たちと共有したいと思っています。

 

── 苦労された点や今後の課題を教えてください。

銀行内、支店間の浸透度もまだ足りず、これからの課題であると感じていました。SDGs担当を設けたことでもちろん良い面の方が多いですが、「SDGs」という言葉が入った案件があると、自分ではなく、担当に任せればよいと考えるデメリットもありました。今では、自分のこととして取り組むことが大切であるとの流れが出始めていますが、この流れをもっと大きくしていくことが課題です。

 

── 少子高齢化は日本全体の問題といえますが、地域課題に関しての銀行の役割はどのようにお考えでしょうか。

愛媛県も高齢化や人口減少が顕著です。それぞれの地域に合った地域課題の解決のために、様々な分野の事業者と連携して十分な対話を重ねていくことが重要です。また、デジタル化も推進しなければなりませんが、高齢者も多く、一方的に進めることは難しいのが現状です。新しい技術を取り入れながら、対面と非対面の両立、人と人の温度を感じるようなお取引が大切であると感じています。

 

例えば、本部の中に専門チームを作り、ITを活用した方法で本部と支店の担当者、そしてお客様をオンラインビデオ通話でつなぎ、顔が見える形で話ができるようにしたいですね。それには、本部の者が支店の営業担当が困ったとき、SDGs関連の意識の向上も兼ねて、しっかりサポートしていかねばと思います。ITを活用すれば、本部と距離が離れた支店間でも同じ温度感で仕事をすることもできますし、それが顧客サービスの向上にも役立つと考えています。

 

産業は1次・2次産業が中心ですが、人口の減少は事業所の縮小にも繋がります。愛媛県は全国的に知られる道後温泉があり、タオルや紙の製造業、海面養殖などさまざまな魅力があるので、お客様と一緒に地元の発展を促し、ともに解決していきたいと思っています。それにはやはり、環境に目を向けた地域としての魅力を全国に発信し、地域の価値を上げ、地域で利益をもたらすような活動をしていくことが重要だと感じます。

 

今回の受賞に関して、地方銀行の役割をしっかり考え、自治体との連携もとりながら、SDGs・ESGの面からの地域活性化に向けた取組をサポートしていきたいと思います。

 

── ありがとうございました。

(2020年9月オンラインにてインタビュー)