活動内容

2019年度 環境大臣賞 地域部門

SDGs達成に向けた取組を通して実践する
地域・お客さま・当金庫の共有価値の創造を目指す「そうしんCSV経営」
─鹿児島相互信用金庫─

概要

① 自治体と連携した「奨学ローン」制度の開発

若者が地元の外に出て学び、将来安心して地元に戻り活躍できる環境を構築するため、自治体と連携し、通常の教育ローン等に比べ金利優遇された、毎月一定額を奨学金と同様の形式で受け取ることができる「奨学ローン」制度を開発した。当該ローンの利用者(債務者=学生の保護者)が負担した利息は、自治体が「奨学基金(原資は自治体が設立し地元企業等の寄付やふるさと納税等)」から補填する。学生が学校卒業後10年以内に地元に戻れば、元金も補填する仕組み。自治体が利用者の利息負担と子女が地元に戻ってきた場合の元金補填を行うことで、若者の進学機会の確保とUターンを促し、少子化抑制と地域の活性化に貢献するものである。

 

② 竹SDGs支援プログラム「TAKE(竹、テイク)SDGs」~竹SDGsバッジの制作~

竹林面積が日本で最も広い鹿児島県にとって、竹はバイオマス原料や地元産品の素材となる地域資源であると同時に、担い手不足による竹群生の拡大と深刻化、獣害被害の悪化等をもたらす地域課題にもなっている。県内有数の竹林面積を持つ薩摩川内市では、地元の関係者が竹を活用した産業振興及び雇用創出・竹林保全、温暖化対策としての環境貢献等につなげる活動に取組んでいる。

    これら地域課題の認知度向上や、竹を活用した新たなビジネスの機会創出を促進することを目的に、薩摩川内市、薩摩川内市竹バイオマス産業都市協議会、八木竹工業株式会社との連携のもと、「竹SDGsバッジ」を制作した。当金庫の全役職員及び薩摩川内市の地元企業や市職員、市議会議員等が「竹SDGsバッジ」を着用することで、鹿児島県内における竹林の適切な管理による里山保全や自然災害の防止及びSDGsに対する意識向上に貢献している。

 

③ 制服回収プロジェクト

 取引先経営者で組織する「三紘会」と連携し、制服等の購入が困難な家庭をサポートすることを目的に、役職員及び当金庫取引先(三紘会会員等)の家庭に眠っている、使わなくなった制服やランドセル等を回収し、制服を必要とする子供たちへ提供する「制服回収プロジェクト」を実施。

本プロジェクトは、制服等をリユース・リサイクルすることで環境保全に寄与するとともに、子供の貧困対策への支援となる。回収された制服等のリサイクルにより生じた益金は、全額、独立行政法人福祉医療機構の「子供の未来応援基金」に寄付するとともに、制服等として利用が難しいものは、さらにリフォームされ、震災等の被災地で活用される。本プロジェクトの実施を通じて、三紘会会員へのSDGsの認知度向上・普及促進を図る。

 

 

実績

①自治体と連携した「奨学ローン」制度の開発

2016年3月の長島町「ぶり奨学ローン」販売開始以降、2019年12月末現在までに合計3自治体で取扱っている。2019年12月末時点の奨学ローン販売実績は、3自治体における合計で、実行件数210件、ローン契約極度額が2億9,600万円。2019年12月末時点で、同ローン完済者の子女(新社会人等)45名のうち、地元に帰ってきた子女は11名(帰町率25%)。

 

②竹SDGs支援プログラム(竹SDGsバッジの制作)

1,300個の竹SDGsピンバッジを作成。当金庫全役職員(約700名)及び薩摩川内市職員・市議会議員・本プログラムに賛同する地元企業の役職員(約500名)が着用。

 

③制服回収プロジェクト

取引先で組織する「三紘会」と連携してプロジェクトを実施することで、会員(中小企業経営者、個人事業主等)約1,600名にSDGsの情報を発信。回収された制服等の合計は310点で、リサイクルで生じた益金は福祉医療機構「子供の未来応援機構」に寄付。

 

「21世紀金融行動原則」の7つの原則への対応とアピールポイント

原則(1)
  • 金融及び非金融サービスの提供等を通じて地域社会が抱える困りごと解決を行い、地域・お客さま・金庫の3者にとっての共有価値である「持続可能な地域社会の実現」は、地域と一心同体の金融機関として「地域超密着経営」を掲げる鹿児島相互金庫の理念・経営方針である。その表明として「CSV経営の追求」を宣言。さらに九州の金融機関を含む企業体として、また全国の信用金庫としても初となる「SDGs宣言」を行った。

 

原則(2)
  • 取組①は、少子化抑制やUターン促進により地域の持続可能性向上を目指しており、自治体連携を要する地域性の高い金融商品でありながら、県内では長島町・南大隅町・大崎町で展開されている。また富山県氷見市、群馬県下仁田町、愛媛県上島町、鳥取県智頭町など国内に広がっている。
  • 取組②は、地域の社会・環境課題をSDGsバッジに活用することでSDGsの理念を伝えるものであり、汎用性が高い。
  • 取組③は、制服のリサイクルを通じて環境保全と子ども貧困問題解決に資するものである。

 

原則(4)
  • これらの取組は、全て多様なステークホルダーを巻き込んだ実践であり、パートナーシップで目標達成を目指している。また取組の開発にあたっては、ステークホルダーとの密接な連携はもちろんのこと、それぞれの利害の実務的な調整やSDGsやCSV達成が達成されるよう主導的役割を果たしている。

 

原則についての説明はこちら

 

選定理由
  • 2018年10月、信用金庫として全国で初めて「そうしんSDGs宣言」を発表し、トップを含めた組織全体で、SDGsと関連させる形で地域課題の解決を価値創造につなげようとする強い姿勢が見て取れる。
  • その具体的な取組として、「ぶり奨学ローン」など自治体と連携した「奨学ローン」制度の開発は、次世代、そして社会全体へのインパクトと広がりを感じる。
  • 奨学ローン制度は、地域にUターンした人材が、将来地域課題の解決に貢献し、地域社会にインパクトを与えることにつながることが期待できる。
  • 竹SDGs支援プログラム「TAKE(竹、テイク)SDGs」は、足元にある自然資源をめぐる課題解決を本業と絡めている点が評価できる。
  • 以上から、地域資源に目を向けて地域を活性化しようとする組織的な取組事例が、全国の地域金融機関にも広がって欲しいという期待を込めて、大臣賞に選定する。

 

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