資 料

2018年度(平成30年度) 第1回 

【開催報告】21世紀金融行動原則・UNEP FI・環境省共催セミナー「SDGs達成に向けた積極的な投融資~ポジティブインパクト金融原則」

2018年7月27日(金)午後3時より、UNEP FI、環境省、21世紀金融行動原則の共催として、ポジティブインパクト金融をテーマとした第1回預金・貸出・リース業務WG 兼 第3回持続可能な地域支援WGを開催いたしました。21世紀金融行動原則署名機関、UNEP FI署名機関などを中心に合計80名ほどの参加がありました。

 

 

2030年までの達成目標である持続可能な開発目標(SDGs)の合意後、UNEP FIでは世界の主要な金融機関とともに、SDGs達成に向けて金融機関が積極的に投融資を行うための原則「ポジティブインパクト金融原則」を作成しました。「SDGs」という言葉を良く耳にするようになった今日、実際に金融機関としてその達成のために何ができるのか、またどのように金融機関やその取引先企業の価値創造に繋げることが可能なのかのヒントを考えるセミナーです。

 

来日中の、UNEP FIのジェローム・タジャー氏をお招きし、最新の情報をご提供いただき、パネリストと共に、SDGs達成に向けた金融機関による投融資のあり方について議論しました。

 

日時

2018年7月27日(金) 15時00分~17時00分

 

場所

AP新橋虎ノ門会議室 I+J(東京都港区)

 

  プログラム

<全体進行>

・環境省 大臣官房環境経済課 環境金融推進室 室長補佐    田辺 敬章 氏

 

【講演】

「SDGs達成に向けたポジティブ・インパクト・ファイナンスの動き」

・UNEP FI ポジティブ・インパクト・ファイナンス(広報担当) ジェローム・タジャー 氏

  ※本レポートは下部よりダウンロード可。

 

【ディスカッション】

「SDGs達成に向けた、金融機関の投融資と取引先企業のビジネスチャンス(仮)」

<モデレーター>

・UNEP FI 日本コーディネーター   野村 香織 氏

<パネリスト>

  • UNEP FI                                                                                  ジェローム・タジャー 氏
  • ニッセイアセットマネジメント 株式会社 運用企画部ESG推進室 エキスパート    長谷川 道子 氏
  • 株式会社 日本政策投資銀行(預金・貸出・リース業務WG座長機関)執行役員 産業調査本部副本部長 兼 経営企画部サステナビリティ経営室長
     竹ケ原 啓介 氏
  • 三井住友トラスト・ホールディングス 株式会社(持続可能な地域支援WG座長機関)フェロー役員 兼 チーフ・サステナビリティ・オフィサー
    金井 司 氏

 

開催の内容

講演 ポジティブインパクト金融

UNEP FI ポジティブ・インパクト・ファイナンス(広報担当) ジェローム・タジャー氏

 

まず、タジャー氏よりUNEP FIが提唱している「ポジティブインパクト金融」についての説明が「ポジティブインパクト金融原則」とポジティブインパクトをより詳しく説明するための文書「SDGs達成に向けた金融における インパクトの再考~ポジティブ・インパクト・イニシアティブのポジションペーパーと行動呼びかけ」(暫定版、現在コンサルテーション中。2018年11月頃に最終版公表予定)を元にありました。

主な論点:

  • SDGの資金ギャップは、第一にビジネスモデルのギャップである。
  • 戦略の中心にインパクトを置くことは、SDG関連の支出を減らし、民間部門の解決策を促す。
  • 金融セクターは、インパクトを求める行程において重要な役割を果たす。
  • ポジティブ・インパクト・ファイナンスの原則は、インパクトを求める行程におけるグローバルな枠組みである。
  • ポジティブ・インパクトを加速し、達成するためには、インパクト・エコシステムが必要である。

 

持続可能な開発目標(SDG)の投資ニーズの大部分は新興国と途上国にあり、その多くはインフラに関するものであると広く認識されています。投資ニーズから公的および民間の資金フローを差し引いた資金ギャップの推定値は、すべての新興国及び途上国について2.5兆ドル、特にアフリカにおいて1.3兆ドルでした。ここで必要なのは、環境やソーシャルインパクトに対応するビジネスモデルです。

 

実際にソーシャルインパクトを中心にして、どういったビジネスモデルがあるかという事例として、「街灯」の例を挙げました。例えば、公共の照明(街灯)を多機能化する。町を照らすだけでなく、ソーラーパネル(エネルギーの供給)、Wi-Fiなどを多くの機能を設置することが可能です。その結果として、環境、社会へインパクトを与えるとともにキャッシュフローも生まれるかもしれません。また、公的サービスとしてもコストを低く設置することが可能かもしれません。

 

金融機関としてどのように支援ができるでしょうか。インパクトに基づくビジネスモデルが必要です。ポジティブインパクトに必要なのは、環境、社会面のインパクトをサポートし、さらにマイナスのインパクトにも対応することです。

 

ネガティブとポジティブ影響の違いとして、例えば風力発電の例があります。風力発電は、再生可能エネルギーの発電で、二酸化炭素の排出を削減できます。また、雇用を創出し、電力が生まれ、その地域が潤うということで、経済面でのメリットもあります。同時にマイナスの影響としては、生物多様性の喪失、生息域の破壊、渡り鳥のパターンに影響を与えることもあります。これに対しての解決策を考えなければなりません。

 

ポジティブインパクトアプロ―チをしていく上でのガイダンスノートを作成中です。包括的なツールを使うことで、透明性、明確性を向上させ、グリーンウォッシングなどを回避したいと考えています。11月にフランス・パリで開催される予定のラウンドテーブルにおいて公表する予定です。

 

問題となっているのは、十分なビジネスソリューションがない、インパクトを提供するということを軸においたビジネスモデルが存在していないことです。

 

金融機関の役割も大事ですが、公共部門の役割もあります。政府、地方自治体は、社会・環境影響の効果を出さなければならない。入札をする際にインパクトを与えるための事業のきっかけを作っていく必要があります。そして、企業や金融機関にアプローチし、企業側がビジネスのソリューションを提供するというような共同で行う作業となります。

 

SDGsを実現するプロジェクトに対してどのように資金調達をするのかということを、すでに存在する知識やツールを元にまとめているところです。概念としてはまとまってきているので、実務的にどう落とせるかという検討をしているところです。またベストプラクティスから学ぼうとしています。

 

多くの機関からの参画を望んでいます。レポートは現在コンサルテーション中で、ニュースレターを発行し、情報提供も行っています。

 

パネルディスカッション

モデレーターのUNEP FI日本コーディネーターの野村香織さんより、各パネリストの紹介とポジティブインパクトを与えるプロジェクトの事例の紹介があり、パネルディスカッションが始まりました。

 

左から、環境省 田辺補佐、UNEP FIジャパン 野村氏、UNEP FI タジャー氏

 

左から、ニッセイアセットマネジメント 長谷川氏、三井住友トラストホールディングス 金井氏、日本政策投資銀行 竹ケ原氏

 

投融資に携わられるそれぞれの立場から、ポジティブインパクトの考え方に近いような取組の紹介

 

ニッセイアセットマネジメント株式会社 運用企画部ESG推進室 長谷川 道子 氏

国連責任投資原則(PRI)が設置している「SDGsアクティブオーナーシップ・ワーキンググループ」にメンバーとして参加しており、そこでの議論の紹介がありました。投資家としてSDGsにどのように貢献できるかという点に関しては、長期的な視点で捉えること、そしてリターンを広義に捉えることの重要性などが議論されており、その中で、ソーシャル・ライセンス・トゥ・オペレート(社会的な操業許可)といった視点が今後ますます重要視されてくるのではないか、といった説明がありました。また、ニッセイアセットマネジメントにおいても、SDGsへの貢献を通じて企業価値を高めることが期待される企業に投資する「SDGsファンド」を運用しているとの紹介がありました。

 

 

三井住友トラストホールディングス 金井 司 氏

ポジティブインパクト金融の例として、三井住友信託銀行の「自然資本評価型環境格付融資」のご紹介がありました。PwCのエッシャーというツールを使って、サプライチェーン上流での環境負荷、リスク情報を分析し、還元するサービスです。

また、「特定寄付信託を通じたドクターカー支援」についても紹介され、現在はNPOと組んで寄付する仕組みにとどまっているが、今後ビジネスとして発展させることも可能ではないかという説明がありました。

 

 

 

 

日本政策投資銀行 竹ケ原 啓介 氏

21世紀金融行動原則の預金・貸出・リース業務WGの座長として、どう地域金融機関に理解してもらい、取り組んでもらえるかという点を考慮し、長野県飯田市の取り組みの紹介がありました。長野県飯田市のかみむらという過疎地域。社会課題として、人口減少・高齢化が進んでいるが、財産としては、一級河川があり、それを使った小水力発電事業を始めるという事例を紹介。この事業は社会的には意義がありますが、このままでは金融機関からの融資を得るのは難しい状況です。飯田市の場合は、再エネ条例(地域環境権)があり、行政が関与し支援を行い、地域金融機関もプロジェクトを作るときに関与しています。このようにしてインパクトのあるプロジェクトにも与信がつくという事例をご説明いただきました。

 

ポジティブインパクトについてのディスカッションペーパーを読んだ上での意見や、それぞれの立場で日々感じているSDGsを投融資のビジネス戦略に落とし込んで行く際の障壁や課題などについての意見

 

・竹ケ原氏

インパクトを考えることは外部性の計測だと思っていた。プラスであれ、マイナスであれ、プロジェクトのキャッシュフローには反映されない効果の計測ということ。しかし、仮に計測できても、外部性にとどまり内部化できない限り、金融判断の対象にはならない。政府などが関わって内部化する必要がある。

しかし、今回、街灯に機能を付加し、経済性を改善することができるという話を聞き、受け身ではなく、能動的にプロジェクトに付加価値をつけていくという視点に気づいた。こうしたアプローチを金融機関として考えることができるのではないか。

 

・金井氏

今回の資料などを拝見し、考え方の整理ができた。力はあるけど、海外に進出できない中小企業のようなところをどう支援するかが課題ではないか。前回の持続可能な地域支援WGでは、JICAの中小企業支援事業について紹介してもらったが、次は、9/19に産業革新機構を呼んで、同様のテーマでWGを開催予定。

 

・長谷川氏

「SDGsファンド」の開発にあたっては、当初、企画案が社内でどこまで受け入れられるかという不安もなかったわけではないが、蓋を開けてみると多くの関係者の賛同や協力が集まり、開発は順調に進んだ。会社として長年ESG投資に取り組んできたという土壌があったほか、ESGやSDGsに関する動向について日頃から情報収集し、社内関係者への共有を欠かさず続けてきたことも奏功したと感じている。

 

 

その後適宜、ディスカッション内容を聞いたタジャー氏からのコメントもいただきながら、ポジティブインパクト金融をどう理解すべきかの議論を進めました。

 

インパクトをどう計測するのかということも大事であり、そのためのガイダンスやツールなどはUNEP FIが現在検討中で、2018年11月に公表が予定されているということがタジャー氏から紹介がありました。

 

会場からの質問・コメント

ESG投資とポジティブインパクト投資がどう違うか、どうつながっているか、また、日本はインパクトインベストメントとして、例えば世界銀行のワクチン債やアジア開発銀行のウォーターボンドなど、個人投資家を中心に債権を購入することで、貢献している事実についてなど、参加者からの質問や意見をいただき、有意義な意見交換を行うことができました。

 

 

ダウンロード

プログラム(PDF, 174KB)

 

ジェローム・タジャー氏 講演資料「Positive Impact Initiative」(英文)(PDF、1.8MB)

※後日、日本語訳掲載予定

 

「ポジティブ・インパクト金融原則」(和訳)(PDF、661KB)

原文「PRINCIPLES FOR POSITIVE IMPACT FINANCE」(英文)(UNEP FI WEBサイトへ)

 

「SDGs達成に向けた金融におけるインパクトの再考」(日本語仮訳)(PDF、1.6MB)

原文・草稿(Consultation Version)「Rethinking Impact to Finance the SDGs」(英文)(UNEP FI WEBサイトへ)

 

 

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