活動内容

2023年度 選定結果 末吉選定委員長による全体講評

先ずは応募いただいたすべての金融機関の皆様に感謝申し上げます。顧客や地域に根差し、自らの金融機能を活用した意欲的な応募案件には勇気付けられました。国内でのサステナブル金融の裾野の広がりを感じさせる応募状況でした。

 

とは言え、サステナブル金融が目指す地球環境の改善には程遠く、寧ろ、危機的領域に入り込んでいます。こうした状況下、世界を見渡すと危機感と切迫感を強める様々な非国家主体(Non-state Actors)がかつてない高度な取組を始めています。無論、金融も例外ではありません。今では地球環境を守る取組が、国や地域における経済や社会の生き残り競争となっている折から、果たして日本は大丈夫か、就中、金融はその役割を果たしているのかとの思いで審査に当たりました。

 

とは言え、目を内外に向けますと、気候変動の劣化、生物多様性の喪失、資源の枯渇、人権侵害、などなどの世界的課題に加えて、我が国は高齢少子化、地域社会の衰退など、これまで経験したことのない「縮む日本」という難題に直面しています。無論、自治体や企業が脱炭素など持続可能な社会の実現に向けた取組を加速し、若者世代も小学生からSDGsを学び、サステナビリティに高い感度を持つなど、社会の変化が始まっていますが、本当の社会転換は、社会の基礎的インフラである金融機関が本来の役割を果たしてこそ実現します。金融が変わらぬ社会ではサステナブル社会の実現は難しいのです。世界では、社会的役割を自覚しサステナブル金融に取組む機関が生き残り、それができない先は自ずと淘汰されるサバイバルゲームが始まっています。

 

最優良取組事例の選定委員会はこうした認識の下、2050年のカーボンニュートラルの実現へ向けての取組をスピードアップと共にレベルアップしていかねば、問題解決に間に合わないだけでなく、世界との競争に於いて日本が置いてけぼりを喰いかねないという危機意識を委員全員で共有して選定作業に当たりました。

 

審査の過程ではこんな声が出ました。

    • この2~3年で全体のレベルが随分アップした
    • 地域への関心がたかまり、オンザグラウンドでの進展が見られる

といったポジテイブな見方がある一方で、 

    • まだまだポテンシャルを活かしきれず社会貢献レベルに留まっている
    • 多くのステークホルダーの巻き込みが足りない
    • 個別案件だけでなく、経営そのものの見直しが必要ではないか

との辛いコメントもありました。その上で、

    • 仮令、今のレベルが低くても、高い目標に向かって本当の道を歩んでいる限り、自信を持って、社会と価値観の共有を図りつつ前進して欲しい

との励ましの言葉もありました。

 

21世紀金融行動原則の本当の生みの親は2011年の東日本大震災でした。未曽有の状況下、社会における金融の役割と責任の大きさに多くの金融関係者が強く目覚めさせられたのです。折しも、能登半島を襲った地震は、改めて我々に問いかけています。日本の金融は、志を高く持って世界に負けないレベルとスケールとスピードを持って取組んでいるのかと。

 

良き金融があってこその良き社会です。その良き社会がなければ良き金融もありません。日本の金融が良き金融を通じて良き社会を目指していただくことを強く願っています。

 

2024年3月13日

 

21世紀金融行動原則 最優良取組事例選定委員会委員長

末吉 竹二郎