21世紀金融行動原則の事務局を置いている地球・人間環境フォーラムが発行する月刊誌『グローバルネット』において、環境省のESG金融懇談会の委員であり、21世紀金融行動原則の運営委員機関の日本政策投資銀行の取締役常務執行役員の成田耕二さんのインタビュー記事が掲載されました。
ESG金融懇談会を振り返って 日本をESG金融大国に
ESG金融懇談会委員、日本政策投資銀行 取締役常務執行役員
成田 耕二(なりた こうじ)さん
ESG金融懇談会の提言書が7月に公表された。これは、環境省が事務局となり、銀行、証券、保険などの金融機関の代表者や業界団体、有識者など19名から成るESG金融懇談会がまとめたもの。成田さんは、メンバーの一人として7ヵ月にわたる議論に参加した。
今回の提言のポイントを尋ねると、「『ESG金融』という言葉を使って、直接金融のみならず間接金融にまで重点を置いている点。企業の99%以上が非上場の中小企業が占めている日本では、中小企業に資金を融通する役割を担っているのは、間接金融の主役である地方銀行や信用金庫など地域金融機関。日本の経済界の隅々にまでESGの考え方を広めていくためには、地域金融機関を変えることが不可欠だ」と間接金融の重要性を挙げる。地域金融機関は、貸出先の本業での成長可能性を金融のプロとして見極めるという事業性評価を行うことが監督官庁から求められている。「その中で企業価値を高めるためには、ESG視点を持って金融機関が地域の事業会社に支援・評価をしていけば、金融機関と企業はともにESGやSDGsに貢献しながら、共通の価値創造を実現できる。加えてそれは地域活性化にもつながる」。
今回の提言のもう一つの注目点として、成田さんは、経営層にESG金融についての意識を持ってもらうことを明確に打ち出している点を挙げた。提言をフォローアップする場として「ESG金融ハイレベル・パネル(仮称)」の設置が打ち出されており、金融・投資分野の業界のトップと国が連携し、ESG金融に関する意識と取り組みを高めていくことが期待される。成田さんは「金融の世界で環境分野を超えてESGやSDGs全体をテーマとして取り扱う場を設け、金融庁や経済産業省をオブザーバーに入れながら議論したことは大したもんですね」と、環境省の意気込みを高く評価している。
日本政策投資銀行もメンバーであり、環境金融の取組を実装していく既存の枠組みとして「21世紀金融行動原則」(地球・人間環境フォーラムに事務局)があるが、成田さんは「今回の提言を、実際に実行に移していくための具体的方策について議論していく場として適しているのではないか」と同原則への期待を語ってくれた。 (希)
※地球・人間環境フォーラム発行『グローバルネット』334号(2018年9月)「フロント/話題と人」に掲載